#38 着々と強くなる

 シュプレナード王との定期的な会合を終え、俺はギルドに来ていた。


 王様とはいつも、リバース村の状況と魔族への防備について話している。


 ただ、移動石を使って全国をパトロールしていることは話していない。

 それを言ってしまうと、なんで行ったこともない土地に行けるのか説明しなければならなくなるからだ。


 何度か全クリしたのでどこの土地でも行けるんですよ、なんてことは口が裂けても言えないのだった。


「お、『魔法狩猟師』の職業素養がある!」


 ギルドのカウンターで受け取った用紙を見て、思わず声が出る。

 魔導士と猟師をしていたおかげか、二つが合体したような上位職『魔法狩猟師』の職業素養を獲得していた。


 この魔法狩猟師というのは、端的に言えば魔法での狩猟を得意とする職業だ。


 動物や魔物の生態に精通しており、魔法系の能力の上がり方も優秀。デメリットがあるとすれば、習得できる魔法のタイプが、罠魔法などの使い勝手が特殊なものに特化していくぐらいだろうか。


「でも、悪くないよな」


 だがそのデメリットも、今の俺にとってはある意味でメリットとなる。


 魔法狩猟師が覚える魔法は、狩猟師というぐらいなので、結界のようなものを張って動物や魔物を誘い込んで息の根を止めるタイプのものがあった。他にも気配を消して敵に近づける便利な魔法など、派手さはないが実用的なものがたくさんあった印象だった。


 これを習得して鍛えられれば、全国各地の魔族防備も、さらに盤石にできるのではないかと思うのだ。


 例えば各地に罠魔法を張り、その効果を維持し続けるために遠距離から魔力を送り続ければ、否応なく罠魔法の精度、威力と、俺の魔力が爆上がりすることだろう。

 そしてその魔法の熟練度が向上すれば、俺が現場に行く必要もなく魔族を退けられる防御システムが構築できるのではないか。


 俺は頭の中で、そんな風に思考を発展させていった。


「それじゃ『魔法狩猟師』になります」

「はい、かしこまりました」


 ギルドの受付嬢に声をかけ、転職を完了する。

 よーし、これでもっと状況は好転するはずだ。安全が高まれば高まるほど、俺は安心なマイペースライフが送れるからな。


 この調子でがしがしステータスを上げて、ゆくゆくは爆散エンドも回避してやるぞ!


「おーい、レオン。ギルドはどうだった?」


 ギルドを出てすぐ、声をかけてきたのは同行してくれたルルリラだ。

 彼女は手足がすらっと長く、出るとこは出ており抜群のスタイルを誇っている。盗賊らしいへそ出しの服装も相まって、周囲の視線を集めている。


「ああ、魔法狩猟師になったよ」

「魔法狩猟師? なんだそりゃ」


 聞いておきながら俺の転職にはあまり興味がなさそうなルルリラ。待ちくたびれたのか、大欠伸をしている。


「そういえばウチもさ、転職したんだよ。なんか面白そうな職業があったからさ」


 ルルリラは暢気な雰囲気のまま言う。

 はて、なんの職業に就いたのだろうか。


「なんか『忍び』だってさ」

「かっけー!!」


 まさかの『忍び』。要するに忍者である。

 確かに盗賊の上位職に位置するが、ルルリラがそれを選ぶとは思わなかった。


「ギルドの姉ちゃんに勧められてさー。盗賊の良さを持ったまま強くなれるって言うから、なってみた」

「ああ、『忍び』はかなり強力な職業だから、百人力だよ」

「へへっ」


 なにせ『忍び』には、俺がなりたかったくらいだ。

 剣を二刀流できるし、投擲攻撃や遁術と呼ばれる特殊な魔法も使いこなす。

 油断していると、すぐにでもルルリラに追い抜かれてしまうかもしれないな。


「それはそれとしてさー、なんか食おうぜー。ウチ、腹減っちゃったよ」


 話を変え、お腹を押さえて騒ぎ出すルルリラ。


「よし、じゃあ腹ごしらえとするか」


 言って、シュプレナードの行きつけの店へと歩き出した。


「あ、そういえばさっき小耳に挟んだんだけど」


 歩き出してすぐ、ルルリラがまた話を切り出す。

 ルルリラはいつもこうして話題をたくさん振ってくれるのでありがたい。


「シュプレナード領内に、『ダンジョン』が出現したらしいぜ」

「うお、ダンジョン!!」


 ルルリラの言葉を聞いて。

 俺の心も、新たなワクワクで湧き立っていた。


 ダンジョン、行かないわけにいかないだろ!


:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【魔法狩猟師】になりました

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