TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡〜TS解除の情報集めがしたかっただけなのに、バズりまくって引き返せなくなってきた〜
【コラボ配信】魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略します【ヒバナちゃんと】2
【コラボ配信】魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略します【ヒバナちゃんと】2
「雪姫ちゃんはここにいて!」
「え?」
「お互いの戦い方を見せるって話したでしょ? まずはあたしから見せるね!」
「あ、ヒバナさん!」
一人でモンスター十体と戦うつもりか!?
ヒバナは大きく飛んで木に群がるリトルラプトルたち十体の後ろを取った。
即座に詠唱。
「炎神フラムよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは熱帯びた拳、【ヒートフィスト】!」
ヒバナの両手が赤いオーラに覆われる。
間髪入れずリトルラプトルの群れに突撃した。
「たあああああああっ!」
『『『ギャアアア!?』』』
リトルラプトルが次々と吹き飛んでいく。
〔ファ――――wwww〕
〔なんでリトルラプトルの群れに囲まれてるのに一方的にボコボコにできるんですかねえ……〕
〔相手の股くぐって避けたり背中に手をついて回転したりってアニメじゃないんだから!〕
〔シンプルに運動神経が強すぎる〕
〔なんというフィジカル系魔法少女〕
「わぁーお……」
木の上からヒバナの戦い方を見ながら呻く俺。
薄々わかってたけど、ヒバナ強いわ。
動きが早いし身軽だ。リトルラプトルに囲まれながら相手の噛みつきやひっかき攻撃は全部避け切っているのがすごい。何で十体一でノーダメージで戦えるんだよ。俺がやったら二秒で死んでしまうことだろう。
ただ、爆発攻撃は使っていない。
連戦で使っていないところを見るとやっぱり回数制限がキツかったりするんだろうか? あとで仕様についても聞いておいた方がいいだろうな。
「ラスト!」
『――――ッ!?』
最後のリトルラプトルがヒバナの拳によって吹き飛ばされ魔力ガスと化した。
「勝ったよー!」
Vサインをしてくるヒバナ。
あれだけ動き回っても疲れた様子はまったくないのがすごい。
バキバキッ!
『グルオオオオオオオオ!』
新手!?
木をへし折って現れたのは四足歩行の恐竜型モンスターだ。トリケラトプス……トリケラトプスにしか見えないな? 頭の上の方が大きく広がり、まるで盾のようになっている。
〔シールドサウルス!?〕
〔ばなちゃんあるある、爆音を聞きつけて他のモンスターが寄ってくることがある〕
〔サンキューばなちゃんリスナー〕
〔囲みから抜ける時の爆発を聞きつけてきたってことか……〕
「もー、終わったばっかりなのに!」
「ヒバナさん、その場にいてください!」
「へ?」
そのまま盾恐竜に突っ込もうとするヒバナに静止の声をかけつつ<初心の杖>を構える。
<妖精の鎮魂杖>を使ってガーベラと一緒に戦う時とは違う。ヒバナを巻き込まないようにしないといけない。
とはいえ安心材料が一つある。
それはダッシュイーターと戦った後に手に入れたスキル、【援護射撃】だ。これがあればパーティ戦闘時に遠距離攻撃の命中精度が上がるらしい。
「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは敵を穿ち削る氷槍!」
氷の槍が杖の先に作り出される。
「でっか! 雪姫ちゃんの魔術大きくない!?」
『――』
ヒバナは驚き、盾恐竜はというとその場に止まって何か能力を使い始めた。どんどん盾の部分が石になっていく。
防御力を上げる能力か?
ただでさえ防御力が高そうなのに……! くっ、一撃で貫けるか!?
ギュオッ!
……あ、【一撃必殺】が発動した。
〔えっ〕
〔えっ……?〕
〔いや、火力高いとは聞いてたし動画も見てはいたけど、実際に見ると……ええ……? マジックアイテムで鬼バフかけてる感じでもないのに……?〕
〔おっ、ばなちゃんリスナー力抜けよ〕
〔雪姫ちゃんの魔術が初見なら仕方ない〕
〔シールドサウルスさんが【ストーンディフェンス】なんて使うから大変なことに!〕
「【アイシクル】!」
『――? ――――ッッ!?』
ズガンッッ!!
巨大化した氷の槍はあっさり盾恐竜を消し飛ばした。ガンッ、ドシュッ! とドッジボールのようなサイズの氷の破片が飛び散っていく。
やばい、加減に失敗した!
「ひ、ヒバナさん大丈夫ですか!?」
慌てて木から飛び降りて声をかける。すると木の陰からヒバナが出てきた。
「だ、大丈夫だよ。それより雪姫ちゃん、今のすごいね!? 雪姫ちゃんの魔術ってこんなにすごいの!?」
「すみません……加減に失敗しました……」
直前で盾恐竜が変な能力を使わなければこんなことには……!
「怪我とかありませんか?」
「全然へーき! 雪姫ちゃんが最初に突っ込まないよう止めてくれたからね!」
ヒバナは特に気にしていないようだった。器が大きい。
〔これが一か月未満で登録者百五十万を突破したダンジョン配信者の力か……〕
〔火力どうなっとる!?〕
〔歩く大砲ってタグの意味がよくわかりました〕
〔そうなんですうちの雪姫ちゃんはバカ火力なんです! すごいんです!〕
〔うちの雪姫ちゃんをそんなに褒めていただいて!〕
〔親バカ湧いてて草〕
〔俺たちは雪姫ちゃんの親じゃない定期〕
〔というかばなちゃんも大概おかしい〕
〔それな〕
〔レアな爆発属性とか関係なくシンプルにフィジカル強者なんだよなあ……〕
〔あっありがとうございますうちのばなちゃんを褒めてくださって!〕
〔うちのばなちゃんもすごいんですよ!〕
〔あっちのリスナーも親バカじゃねーか!〕
コメント欄が盛り上がっている。何というか、反応が新鮮で面白いな。初見の視聴者が多いからだろうか。
「ゆ、雪姫ちゃんって登録者百五十万人もいるの!? しかも配信初めて一か月以内で!?」
ヒバナが驚いたようにそんなことを言う。
「そうですね……色々ありまして……未踏破エリアをいきなり見つけてしまったり、妖精とお話したりで……」
「妖精とお話!?」
あれ、これ知らなかったのか。うぬぼれるつもりじゃなく、妖精については結構ダンジョン界隈では有名な話かと思っていた。
〔ばなちゃんマジで他の配信者見ないからな……ww〕
〔確かもともとホームビデオ的なノリだったんだっけ?〕
〔離れたところにいる家族に元気な自分を見せたい的な……〕
〔何それ健気で素敵じゃん〕
どうやらヒバナはあまり他の配信を見ない派のようだ。
まあそういう人もいるよな。ぶっちゃけ俺も本来そっち寄りだし。
「雪姫ちゃんってすごいんだねー……魔術もものすごい威力だし、かっこいいね!」
キラキラした目で言ってくるヒバナ。
かっこいい……だと……?
「ヒバナさん!」
「わわっ!? 雪姫ちゃん、何で抱き着いてくるの!?」
「ありがとうございますヒバナさん! 私今まで頑張ってきてよかったです!」
可愛い可愛いと言われ続けた今までの配信は無駄じゃなかった。俺はようやく望む評価を得られたんだ。
〔オァアアアアア――――!?〕
〔エンダァアアアアアアアアアア〕
〔雪姫ちゃんからハグだと!?〕
〔ばなちゃんファンですがいきなり可愛い女の子といちゃいちゃしているところを見せられてさあ……最高なんだけど?〕
〔ばなちゃんリスナーはてぇてぇに飢えていると聞いていたが本当だったか……〕
「さて……それじゃあヒバナさん、今日はもう帰りましょうか」
「帰らないよ! まだ十五分くらいしか配信してないよ!?」
はっ、いけない。満ち足りた気分になり過ぎて配信を終わらせるところだった。
「す、すみません、落ち着きます。というか急に抱き着いたりしてすみませんでした……」
「あはは、そんなの気にしてないって。女の子同士だし」
「………………そうですね……」
「え、何で複雑そうなの」
何もおかしくない。今の俺は十二歳の女の子だ。そうでないと中一の女の子に急に抱き着いた男子高校生になってしまう。今の俺は十二歳の女の子だ……
「そ、それじゃ行きましょう。連携についても、思いついたことがあるんです。次の敵で試してみたいですね」
「え、どんなのどんなの?」
「ふふ、歩きながら説明します」
密林の中を俺たちは再度移動し始めた。
「…………雪姫ちゃん、いい子だなあ……やっぱり迷惑かけたくないな……」
不意に何かを呟くヒバナ。
「? ヒバナさん、どうかしましたか?」
「な、何でもない!」
慌てて誤魔化すようにヒバナはそんなことを言った。どうも配信開始の時から少し様子がおかしいんだよな。体調不良とかじゃないといいが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます