土蔵を相続したら、眼鏡じーちゃんか憑いてきた。

るるあ

形見分けの眼鏡に振り回される


 大好きな鯖江ばあちゃんが亡くなった。

 100歳、大往生。

 穏やかに笑って逝った。


 うちは研究大好き共働きで、俺はばあちゃんに育ててもらったと言っても過言ではない。そんなばあちゃんがいなくなった。

 だから、大事なものが急に抜け落ちたような…、まだ実感はない。


「おお〜、いつ見ても立派。」


 俺は形見分けに、ばあちゃんの大切にしていた土蔵を、丸ごと貰った。

 告白して振られた、合格・卒業した、念願の会社に研究職で採用された……何かあったら、ここ。秘密基地みたいなものだ。


 その土蔵だが、1階は和風カフェかな?

 というくらいに整えてあるが、中二階?みたいになってる奥は手つかずだ。ばあちゃんもよく判らない、あまり触らん方がいいって言ってたな。

 とりあえず俺は、そこを探検(掃除)する事にした。


 まず、ほぼ梯子と言っても過言ではない階段を登る。その奥はばあちゃんも滅多に行かない。つまり……


 「…ッゲホ!すっごいホコリ。」

 

 高い天井付近にある窓から差し込む光が、ここいら一帯のホコリで反射してキラキラしてる。何だっけ、チンダル現象?

 そういう夢のない事を言うなって、ファンタジー大好きばあちゃんによく怒られたな。

 ばあちゃん、次は異世界転生しちゃおうかしら〜なんて笑ってたなぁ。あはは。


「……なんじゃこれ」


 色々思い出しながら整頓していると、行李って言うんだっけ?竹っぽいので編まれた、衣類収納ボックスみたいなのが積まれてる一帯に遭遇。その最深部にあったそれは、マトリョーシカのごとく箱が何重にも入れ子になってた。

 その最後の箱の中。妙に綺麗な桐?の木箱を発見。達筆で謎の文字みたいなのが這い回っている。御札?封印?


「ばあちゃんの大好きな和風ファンタジー始まっちゃう?なーんてな〜。」


 そんなアホな事を呟いてしまった。

 ふと風が流れた様な気がして上を見ると、高い天井付近の窓から差し込む光がやけに眩しい……?

 柄にもなく泣きすぎて疲れ目?と目をこする…と、目を離したすきに、箱、開いていた。


 「えっ?開けたっけ?……まあいっか。」


 『うん、まあいいのじゃよ、ご令孫。』


 ?

 空耳…だよな?


 『おーい。儂をここから出してくれんかのぉ?』


 あー……やっぱり箱の中のこれが発生源?

 江戸時代?とかにありそうな、みみにかけるツル部分がない、眼鏡が入っていた。


 『ワシ、付喪神!この家に代々伝わっとったんじゃが、大事にしまわれすぎて無くされてたようなんじゃよ〜。』


 付喪神?

 ばあちゃんの初恋、八方斎さん?


 ……聞いたことあるよ。ばあちゃん、女学校時代に土蔵の整理してて眼鏡と恋に落ちたとかなんとか。流石適当を具現化したばあちゃん、初恋の君をしまい無くすとかもうね……。あ、お見合いするからどらまちっく?な別れをしたとか何とか盛り上がってたな?


 『よしよし、今日からそなたが儂の主じゃな!鯖江殿亡き後、これからは大船に乗ったつもりで儂に任せておきなさい!』


 こうして、眼鏡の八方斎じーちゃんが俺に憑いてくる事となったのだった。


 ★★★★



 その後、新しい主?とやらになった俺は、めがね…八方斎じーちゃんに振り回される事となる。

 色々あるけど、VRゲームしたら中まで着いてきたのには度肝を抜かれた。

 垢BANされるかと思ったが、眼鏡?アイウェア的な物は全て配下?らしくて何かよく判らない力でねじ伏せたらしい。ゴーグル、八方斎さんにひれ伏すの巻……。


 うーん、保護者気分なの?

 てゆーかあんた、ばあちゃんの事が好きだったの?

「これは、好きという事か?いやいや、某は保護者として。」

 ナニコレ。身内の恋愛とかいたたまれないよね…。




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