メガネな俺が、メガネな彼女に告白されるまでのお話
夕日ゆうや
メガネとは?
メガネとはいったい何なのだろうか?
伊達や酔狂で作ったとは思えない。
人の魅力を八割削ぐ、視力補正器具であるのだ。
現に俺はメガネをしているせいでチー牛と呼ばれている。
俺にメガネは要らないのだ。
加えて、隣の席の
可憐な雰囲気と優しい笑顔。
黒髪ロング。楚々とした振る舞い。
なるほど。確かに端正な顔立ちだ。
だがメガネをかけている。
その一点で彼女の魅力はないに等しい。
むしろ、同じクラスメイトの
放課後になり、下校のため歩き始めると、輪田さんと偶然一緒になる。
こんなチー牛に関わるなんて。
一緒にいるところを見られたら、彼女の品位が下がる。
俺は駆け足で追い抜く……が、輪田さんも
駆け足になる。
なるほど。さすがスポーツ万能。
走り出す。彼女も走る。
俺は回り道をして撹乱する。
そこに輪田さんの陰はない。
ホッと一息つき、下駄箱に向かう。
下駄箱前には輪田さんが待機していた。
そりゃそうだ。
誰だって下校するならここを通る。
さすが輪田さんだ。頭も良い。
「どうしてついて来るんだ?」
「だってメガネが似合っているから」
沖縄の海のような透き通った声。
「そうかい。俺は輪田さんのメガネ、似合っていないと思うよ」
「そう……なんだ」
ショックを受けたような顔をする。
サッと何かが目の前を通り過ぎる。
ニャ~
猫だ。
「あ! 返して!」
輪田さんは慌てた様子で猫を抱き寄せる。
その猫がくわえていたのは、メガネだった。
校舎の西日に照らされて、輪田さんの愛らしい顔を見つめる。
「……ふ~ん」
輪田さんがメガネをかける。
「なんだよ!」
メガネを外す。
OH、可愛い。
つける。
「さ、帰るぞ」
「明日はコンタクトにしようかなー」
「なん……だと!」
「多摩くんも、コンタクトしたら考えてあげる」
その魅惑の言葉に俺は抗えなかった。
次の日、俺はメガネを外しコンタクトをする。ついでに整えた髪もあってソワソワする。
学校に着くなりみんなが俺を見てくる。
そんな中、輪田さんがやってくる。
メガネをかけていない。
魔法にかかったように愛くるしい。
「多摩くん! 好き!」
メガネをかけたヒロインたちが振り向く。
俺はどう答えて良いのか、分からなかった。
メガネな俺が、メガネな彼女に告白されるまでのお話 夕日ゆうや @PT03wing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます