肝試しのつづき

  夕暮れも終わろうかという頃の幽霊階段に立つと、なんだか落ち着かない気持ちになる。


 青みがかった空気が、雨の日のように思わせるからだろうか。


 そんな感傷を吹き飛ばすように、男子たちは階段の上の方で騒いでいた。


 下に居る未來たちも、昨日と同じように、全然関係ない話をしている。


 あろうことか。


 誰かが眉村が結構気に入っているなどと言うのが聞こえた。


 今日は彼は居ないからだろう。


 恐ろしい話だ。


「葵ー。

 あとで何か飲んで帰ろうよ」


 下から未來が手を振る。


 未來たちの長く伸びた影が道に落ちているが、それが今にも、むくりと起き上がってきそうで、なんだかやはり、落ち着かない。


 肝試しのとき、幽霊階段に行かなかったのが気になったらしい男子たちが、学校帰りに行くと言い出したのだ。


 雨の日でもないのに、何も出ないと思うが。


 ――いや、そもそも此処には何も出ないと思うが。


 わかっているのだろうに、怜は友人たちと、少し楽しそうにしていた。


 最近まで強い前世の記憶を持たなかった怜は、少年らしさがまだあって。


 自分の方が精神的に年老いてる感じがするな、と思う。


 ちょっと悔しい。



 ほどほどのところで、みんな気が済んだらしい。

 じゃあ、帰ろうかという話になった。


 少し安堵しながら、それに従おうとする。


 階段上を少し行ったところに出来た、フルーツジュースや、フルーツサンドのある店に行くと言う。


 付いていこうとしたが、鞄から、マスコットが切れて転がった。


 仲のいい親戚がくれたものだ。


 それは階段脇の茂みに飛んで落ちたようだった。


 此処って、草刈ったりしないのかな、と思いながら、茂みに分け入る。


 日はもうかなり落ちていた。


 みんなが雰囲気が出るまで待つ、と言って、そもそも遅く来ていたからだ。


 草むらにしゃがんでゴソゴソしていたとき、ふいに声がした。


「そこに『隠れてる』奴、誰だ……?」


 ぞくりとする。


 『隠れている』


 そのフレーズに、なんだか厭な予感がしたからだ。





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