第32話 ハルゼー艦隊の悪夢 前編
ー1941年12月8日 空母『エンタープライズ』艦橋内ー
第二航空艦隊指揮下の6隻の空母から第一次攻撃隊が出撃した頃、巡洋艦1隻と駆逐艦5隻に守られながら空母『エンタープライズ』は、ウェークの飛行基地に航空機の補充を終えてからミッドウェー島へ航空機の補充を終えた空母『レキシントン』と数隻の巡洋艦や駆逐艦と合流していた。
本来ならば、『エンタープライズ』が『レキシントン』よりも少し早く真珠湾に帰航する筈だったが、対日戦が近いという情報から『レキシントン』とタイミング良く合流する様に手配されていた。
そんな中、この合流を考えたウィリアム・ハルゼー・ジュニア中将は、空母『エンタープライズ』の艦橋内で軍帽を床に叩き付けながら怒り狂っていた。
「ジャップの奴らめっ!!コソコソしやがって。必ず見つけて、全員皆殺しにしてやるわっ!!!」
ハルゼーの方にも、日本からの宣戦布告宣言と一部の日本艦隊の行方が分からない情報が届いていたから、怒りがかなり高まっていた。
迂闊に声を掛けたら巻き込まれるのが分かっているから、スタッフ達は少しハルゼーを遠巻きにしながら見ているだけだった。
そんな中、一人の伝令兵が艦橋の中に駆け込んできた。
「報告します!ミッドウェー島から飛び立っていたカタリナ飛行艇部隊の内の1機から、我々の海域に日本機群が多数向かっているとの事です!」
その報告を聞いたハルゼーは怒りを鎮めながら、周りのスタッフ達に指示を出した。
「今すぐ『エンタープライズ』と『レキシントン』に搭載しているF4Fワイルドキャットの発艦準備を進めろっ!!」
それに対してスタッフの中には、「どちらも合わせてF4Fワイルドキャットは、90機弱です。迎撃なんて自殺行為ですっ!」と反論した。
しかし、ハルゼーは、
「そんな事は分かっているっ!ワイルドキャットで敵戦闘機を減らして、我々の艦隊の対空射撃で敵艦爆や敵艦攻を叩くんだっ!!」
ハルゼーが癇癪を巻き散らかしながら、周りのスタッフ達に指示を出した。
慌ててスタッフ達が動き出す中、ハルゼーは日本の攻撃隊を撃退する自信があった。
ハルゼーの言う通り、ワイルドキャット隊で敵戦闘機の数を減らして、敵艦爆隊や敵艦攻隊の護衛を減らした上で護衛艦隊の対空射撃で敵艦爆隊と敵艦攻隊を叩いて数を減らす。
敵艦隊の撃破は無理でも、敵艦隊に一矢報いる事は可能・・・。
ハルゼーの考えは間違っていなかった。『少し前の常識』ではだが・・・。
やがて、多数の日本機群が目視でも確認が出来るくらいに近付いてきた。
ハルゼーは直ちに、命じた。「作戦通りに迎撃を開始しろっ!!」
直ちに、空母『エンタープライズ』と空母『レキシントン』から出撃していたワイルドキャット隊が、迎撃に向かった。
だが、戦闘が始まって間もなくすると、ハルゼー達が呆然となる光景が広がり始めていた。
多数のワイルドキャットが次々と黒煙を噴きながら撃墜されていく光景になっていたからである・・・。
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遂に始まった、第二航空艦隊による空母『エンタープライズ』と『レキシントン』に対する航空攻撃。
ハルゼー達にとっては、正に『悪夢の始まり』ですね・・・😓
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