カラスが白くてもいいじゃない!
青樹空良
カラスが白くてもいいじゃない!
学級委員選び。
それは結構難しい。
そのクラスになって半年経っているとかならまだいい。
けれど、新学期が始まってすぐなんて正直誰を選んでいいのかわからない。
クラスが変わったら知らない子だって結構いる。
ましてや中学に入学したばかりのときなんて大変に決まっている。
なにしろ、いくつかの小学校から来た子が集まっているんだから。
もちろん、小学校の頃から知っていて頼りになる子だっているにはいる。みんなから人望があって、毎回学級委員をやっている子はいるもんだ。ただし、そのときは別のクラスにいた。いい感じにそういう子が同じクラスにいるわけがない。
そんな中で、先生は言った。
「学級委員を投票で選びなさい」
知らない子たちばかりの中で誰を選べというのだ。
そういうときはアレだ。
必殺、出席番号が一番前か一番後ろの子を選ぶ。
正直、たまたま出席番号がそこに当てはまっている子はたまったもんじゃないと思う。
それでも、この方法は結構使われているんじゃないかと思う。
私はそうした。
考えてもわからないから、それしかないし。
そして、学級委員は適当に選ばれた。
先生はその選び方を見ていて言った。
「お前ら、本当にそれでいいのか?」
結構、口が悪い先生だ。
先生は続けた。
「学級委員を選ぶってことはなぁ。お前らが選んだ学級委員が、カラスが白いって言ったらそれが正しいってことになるんだぞ? それでいいのか?」
いや、よくないだろ!
カラスは黒だ!
そんな大事なことを適当に決めてしまったのか!
そういうことは先に言ってくれ!
そうしたらもっと真面目に考えるのに(真面目に考えても誰を選んでいいかわからないけど)!
まさか学級委員選びがカラスの色にまで影響するとは思わないじゃないか!
だけど、選ばれた子(男女一名ずつ)がカラスのことには言及しなかったので、なんだかよくわからないけど私は無駄にほっとした。
◇ ◇ ◇
それから数ヶ月。
「やべー、こいつカラスの色、赤で塗ってるぞ!」
「それなら俺は金色にする!」
「最強か!」
美術の時間にカラスを描くことになったとき、みんながこぞってカラスをヘンテコな色に塗りだした。
そんな中で私は言った。
「私は白!」
そして、バン! と絵を見せる。
「マジか!」
「本当に白だー!」
「手抜きだ!」
「そう、実は塗ってない!」
私は誇らしげに言う。
「おーい、学級委員~! カラス白だってさ」
「うん、僕は黒で塗っちゃったけど。なんか、落ち着くから」
照れたように学級委員の子が言って、みんながどっと笑う。
「いいっていいって。黒もいいよな」
どうやらみんな先生があのときに言った言葉がひっかかっていたらしい。
それにしても、カラスを金色に塗るか?
本当に白にしちゃった私も私だけど。
でも、別にカラスが黒だって決まってるわけでもないしね!
「このクラスは本当に賑やかでいいですね。個性的というかなんというか」
美術の先生が笑っている。
あのときは一年間どうなるかと思ったけど、今ではこのクラスが結構気に入っている。
黒でも白でもなくて、虹色みたいな感じのこのクラスが私は好きだ。
カラスが白くてもいいじゃない! 青樹空良 @aoki-akira
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