bond
@Kansokushiya
第1話 怖かったぁ・・・
怖いなぁ。私はそう思いながら学校で過ごしていた。私が怖いと思っていることは男の子だ。
いや、別に男の子たちが私に何かしたわけではないんだけれど・・・私は男の人が苦手で、怖いと思ってしまう。
私は机の上の本に目線を落として出来る限り静かにしようとした。教室では男の子たちがじゃれ合っている。
ううっ・・・男の子の声が近くでして怖いなぁ・・・どうしよう、今からどこかに行こうかなぁ。私はそう思っていた。と、その時、男の子の一人が私の机にぶつかった。そして、その拍子に私の本は落ちてしまった。
「あっ・・・」
私は小さく声を出した。男の子は振り返った。そして、気まずい顔をした。しばし、沈黙が訪れた。
「えっと・・・ご、ごめんなさ」
「おいおいひろしぃ、お前ドンくせぇなぁ!そんな地味で幽霊の肌色みてぇな色の髪の幽霊女にぶつかるなんてよぉ!」
幽霊女と言われて私は悲しかった。
そりゃあ確かに顔を髪で隠していますが、そんなどこぞのお化けみたいにテレビからも出てこないし、普通の女の子なのになぁ。
私は、黙って席を立ち、本を拾おうとした。その時、いきなり私の本は強引に奪われた。
「へぇ・・・少女向け小説ねぇ・・・ケッ。見た目によらず可愛いもん読んでんじゃねぇか。ハハ。気持ち悪り。」
その子は嘲笑するように笑みを浮かべながら私を見た。それからその本を投げようとした。
やめてと、声を上げたかった。止めにも行きたかった。でも体は、まるで鉛にでも変わったかのように動かなかった。
そこからの後継はまるでスローモーションのように見えた。男の子は私の本を投げた。その方向はゴミ箱だ・・・
私は。私は。目を閉じた。強く強く強く。
外からの光すらも入らないぐらい強く目を閉じた。ああ、そうだよね。高校生一年生にもなってそんなの読んでる私の方がおかしいよね。そう思うと、まるで自分が落ちていくような感覚がした。
でも、本がゴミ箱に落ちる音は全く聞こえなかった。いや、確かに音は私の耳へ聞こえた。パスッという、変な音だ。
恐る恐る私は目を開いた。目に光が差し込み、鈍い痛みが少しだけした。でも、その光景はそんなことを考えさせなかった。
「・・・ふぅ、間に合ってよかった。」
その子は静かに言葉を発した。
「おいてめぇ、邪魔すんじゃねぇよ!」
男の子は大きな声で叫んだ。私はビクッとしてしまった。
「・・・高校生にもなってその幼稚な性格、あまりにも下らない嫌がらせ、それから、人を見下すような態度・・・動物未満ですね。」
「・・・ハッ、だから何だって?」
彼は男の子を冷たい眼差しで見つめていた。それに対して男の子は挑戦的な態度を取り続けていた。
「所詮お前は陰キャに過ぎねぇよ。出過ぎた真似はすんじゃねぇ!」
そう男の子は言うと、彼の前に立ち、ニヤニヤと笑みを浮かべた。
「出過ぎた真似ですか・・・定義域はどうなっているんでしょうか?」
「は?」
「んんん????」
男の子とひろしと呼ばれていた男の子は困惑した声を出した。私も困惑した。
「ええっと・・・関数的に言うと多分一次関数的になるんでしょうが・・・要するにどこからどこまでが出過ぎていない真似になるんでしょうか?」
クラス全員が困惑した。何言ってんだこいつとでも言わんばかりの雰囲気になっていた。
「・・・格好つけんな馬鹿陰キャが。」
男の子はぽつりと言った。が、その声は嘲笑というより、呆たとでも言わんばかりだった。
「ああ、もういいや。なんか、お前めんどくせぇ。おいひろし、席戻るぞ。」
男の子とその・・・ひろし君?は戻っていった。尚、ひろし君は終始申し訳なさそうに猫背だった。
「ふむ、この本は・・・」
その時、本をキャッチした男の子は本を見つめていた。やばい、引かれちゃったかな・・・そう私が考えていると、
「これは、あの大先生の本ではないですか。」
小さく、しかし、しっかりした声で彼はその言葉を発した。
「えっ・・・」
私は驚いた顔で彼の顔を見ていた。
「あっ、すみません。つい・・・申し訳ないです・・・」
彼は、急いでその本を手渡すとそそくさと席に戻っていった。取り残された私は、ぼんやりとしていたが
「あの人・・・面白い人だなぁ・・・?」
そう呟くのだった。
bond @Kansokushiya
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