元世界最強の超越譚(イクシード)
潮風翡翠
序章:超越者
第1話 暁
「同接ゼロ....いっそここまでくると清々しいといえば清々しいのかもしれないが.....」
その存在以外に誰かがいるというわけではないのだが、ぽつりぽつりと独り言を零していく。一応配信をしているのだからこういうのを言ってしまうのはだめなのかもしれないが.....同時接続者数が0である以上誰かに聞かれているというわけがなく、残念な意味で大丈夫といったことになってしまっている。
艶のかかった赤髪は同姓でも美しいと感じるようなものであり、その顔も決して悪いというわけではなく....寧ろ絶世の美少女と評されてもおかしくはない程度に整っているのだから.....そういうところに同接が伸びない理由はないのだろう。
では、何が問題なのか?それはどこまでも難しく、それでいて実に簡単なことである。あまりにもその絵面が変わることなく、地味でありながら.....特に配信を気にしているようなそぶりを見せていないということだろう。
「はぁぁぁぁぁぁ......」
『ダンジョン』と呼ばれる未知なる
法整備が進み、ある程度ダンジョンという存在について研究が進んでいる今では『ダンジョン配信』としてダンジョンそのものが娯楽のようなものになっている。どこまでも刺激的で、時にダンジョンが出現してから1世紀半以上が経っているのにもかかわらず未知なるものが見つかるというのは人々を熱狂させるのにはあまりにも十分すぎるほどの、説得力が伴っている。
小学生に将来なりたい職業を聞けばきっとダンジョン配信者が1位になるのだろう。男女関係なく、人々のことを魅了し続けているのがダンジョンという存在であり......この女もそんなダンジョンに、世間とは違う意味で憑りつかれているのかもしれない。
「....配信映えする実力、ねぇのかな」
そう呟いているのだが実力は....当然ある。何せこの女......
だが、万年ボッチである暁にはそんなこと気付くことが出来るはずがない。独り言はぽつぽつと紡ぐことが出来ているわけなのだが、学校ではまともに話すなんてことはできないし、そもそもの話として近づくなといった不機嫌なオーラを出し続けているわけなのだから。
本人がそれを意識しているというわけではない。なんやかんやでダンジョンというものに取りつかれてしまってはいるものの、普通の女子高校生であることは間違いがなく、人並みの高校生活....要するに青春を送りたいだなんていう人並みの思考自体も持っているのだから、そんなことをする理由なんてものはないのだ。
勘違いされやすい、見た目をしているのがきっと原因なのだろう。誰もがうらやむほどの美少女ではあるのだが、勘違いされやすいほどには冷徹な見た目をしている。つり目気味なその瞳も、勘違いさせてしまうのには十分すぎるほどの効果を持っているようであり全く意図していないのにも、そんなことを望んでいないのにもかかわらずこのようなことに陥ってしまっているわけなのだ。
「あーはいはい。邪魔邪魔」
ブツブツブツブツブツブツ、恨みつらみを吐きながら自分に向かってくる魔物たちをどんどんと殲滅していく。自身の背丈の数十倍はあるドラゴンに、どっからどう見ても物理攻撃が利くとは思うことが出来ないような、そんな見た目のスライム。
実体を持っているとは到底思うことが出来ないような、霧のような存在に、人々が言うところの悪魔のような存在。今の人類では到底、太刀打ちすることが出来ないような魔物がそこには大量に存在しており、それらを暁は何の意に会することなく鎧袖一触にしていく。
少し、腕を振ればそれだけでも耐えきれずにその存在達は壁の染みにへと姿を変えていく。落としていく素材は、そのどれもが高価なものでは間違いがなくかといって、未成年である暁が素材を買取に出すことは法律に反しており捕まってしまうので、それらは全てを無視することになる。
どれほどの損額になっているのかはわからないし、少なくとも成人するまではどんな方法を使っても意味はない。少し特殊な方法を使えば.....バレることなく持ち出すことはできるのかもしれないが、それは暁の望むところではない。なんやかんや言いつつ、最低限の常識のようなものは持ち合わせているのが暁というわけだ。
それに.....今回は素材が目当てなんかではない。『クソゲー』と称されている、このダンジョンを攻略するということが目標であり、素材なんてもの一々気にしている暇なんてものがない、というのも素材を全て無視することが出来ている理由という風になっているのかもしれない。
「あと....200階で攻略完了か」
表層、中層、下層、深層、深淵、奈落、裏世界.....それぞれに区分けされているのだがそれらを全て突破しても尚、このダンジョンというものは続いている。人を殺すためだけに作られた正真正銘のクソダンジョン、とでもいうべき......そんなものに暁は真正面から挑んでいる。
終わりがないということはないし、卓越した感知能力で残りの階層は把握することが出来ているのだから絶望なんてものはない。終わりまでの強さというものもしっかりと把握をすることが出来ているのだから、怯える必要はないのかもしれない。
配信で自分の姿を映しているドローンは特別性であるためについてきてくれてはいるものの、同接の数が増えることはない。気づいていないうちに、1人2人は来ているのかもしれないがフェイクであるなんて言う認定を受けてしまっているようであり、無情にも何かコメントを残すということはなくこの配信は閉じられることになってしまう。
気づいてしまえばより一層落ち込んでしまうことになるのかもしれないが、幸いなことにもそのようなことが起きることはない。そもそもの話として、そのことについて気づいていなかったのだから、落ち込む落ち込まない以前の問題といったところなのだろうか。
「.....湊の言うとおりに制限とかかけて、面白おかしくする方がいいのか....?」
1階層だけで現在はおおよそ80km四方の大きさがあるのだが、それでも次の階層に行くための階段というものは10分もしないうちに見つけることが出来ているし、道中で手てくるモンスターたちも一切視線に入れることなくその気配だけで感知をすることが出来、そのままの流れで殲滅というものをすることが出来てしまう。
魔物たちに、意識のようなものがあればまさしく暁は恐怖の存在なのかもしれない。しかし、そこは流石
閑話休題。そんなわけであり、比較的疾走している中でも大分暇をしてしまっているわけではあるのだが、そんな中で何を考えているのかどうかで言えば友人から自部分に送られた
どう考えても、そんなことをすることが出来るような人物は少ないのだがというか、探索中にどうでもいいことを考えているとなってしまえば全力で心配をされるのかもしれないが、暁にとってはそのような心配事無意味でしかなく文字通りに彼女の規格外さというものがそこには顕著に表れてしまっているわけなのだろう。
始まりといえば、未成年がダンジョンを探索する際の義務である動画。トラブルを避けるために少なくとも、未成年の間はダンジョンの管理を組織している組織、『ダンジョン協会』から支給されるスマホやらドローンやらで中での様子を見せないといけないという制約があるのだが、暁は当然それをめんどくさがった。
『動画とって後から見せるぐらいなら、配信すればいいじゃないの』。何を狂ったのかそんなことを平然と言ってのけて、暁は即日即断。唯一の友人である、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ.....めんどくさい....」
まぁこのありさまといったところなのだろう。才能がないというわけではないし、何度も言うことにはなるのかもしれないが高校生でここまでくるということは暁以外には存在しない。まさしくブルーオーシャンであり、見る人が見ればすぐに拡散されるのかもしれないが.......あまりにもその領域にたどり着くことのできる存在というものが少ない。
高校生にいないというのは当然のこと、大人にもいない。例えば、今何気なく暁が攻略しているこのダンジョンの暁以外の最高階数はなんと17階層まで。暁の10分の1にすらも到達していないのだから、暁の配信の様子が
暁が強すぎるということもあれば、他が同じ領域にたどり着いていないという理由もある。様々な理由があるということは間違いがなく、共通して言うことが出来るのはそのせいで暁の才能が正しく評価をされていないのだ。
それが何か、暁の心を傷つけているかどうかで言えばそういうわけでは決してないのだろう。けた外れの力を持っているのと同時に、些細なことでは一切動じることのない強靭な精神力....言ってしまえば人外の価値観というものをどこか身に着けてしまっているわけなのだからそうなってしまうのは実に自然な流れなのかもしれない。
「さて、そろそろこの鼬ごっこを終わらせますかね?カミサマ」
にやりと、どこまでも邪悪な笑みを暁は浮かべる。その視線の先にはだれもいないはずなのに、まるでその言葉に反応を示しているような....そんな存在がいるのかもしれないなんて思ってしまうがきっと気のせいなのだろう。
その真意は暁本人にしかわかることはない。何を見ているのかは.....暁の領域にまでたどり着かなければ理解も、感知もすることが出来ないようなそんな領域の話なのだから。
探索者情報
名前:
種族名:人間・超越者
レベル:
体力:312/312(312不可思議6381那由他/312不可思議6381那由他)
筋力:11(11不可思議2819那由他)
魔力:18(18不可思議1876那由他)
敏捷:78(78那由他)
(
スキル:剣術Lv.2、身体強化Lv.1
詳細:殺さなければいけないイレギュラーな存在。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます