狛入くんと、神谷さん。
新佐名ハローズ
あわあわする狛入くんと、にまにまする神谷さん。
そりゃあ、好きか嫌いかで言ったら当然好きだよ? 好きだけども。
物には限度って言うもんがあってですね。ニンニクマシマシにしたら良いってもんじゃないし(反論はご自由に)。
昔クリスマスの季節に売れ残ったらしいチキンを親が買って来たんだけど、それがもうニンニク臭いのなんの。
ウチがニンニクスキーならいざ知らず、母親なんて匂いに敏感で寧ろ苦手なのに何で買ってきたのさって思ったよ。
挙げ句に『アンタならイケるでしょ』って押し付けられたけど、顔を近づけただけで気分が悪くなっちゃってゴメンナサイしたのを覚えている。
ニンニクスキーの皆様方、誠に申し訳ございません。アレは流石に無理だったよ……。
そんな若干トラウマ気味なモッタイナイ案件を思い出すぐらいには、今の僕の心はハチャメチャに乱されている。
だって――
「あ~モフモフ~。モフモフさいこ~♪」
さっきから白髪メガネのギャルみたいなケモミミ女子が、狛犬モードの僕をモフりまくってるんだから……。
「……あ、あの~。神谷さん? もうちょっと離れて?」
「え~いいじゃん減るモンじゃなし~。だってモフモフだよ?」
うん、それは僕も知ってる。自慢じゃないけど、僕は狛犬の血が発現した一族の中でも毛艶が良いって褒められるから。
ただソレとコレとは話が違うんだ。
こんなに神谷さんとの距離が近いと、僕の精神がガンガンにすり減っちゃうんだって!
「それは……神谷さんだって、モフモフしてるし」
「自分の触ったってツマンナイじゃん。……それに、コレはモフモフってよりもボワっとしてんだもん」
そう言って神谷さんは自分の狐みたいな二本の尻尾をぱたぱたとさせる。
僕は狛犬の血族の末裔。彼女はこう見えて九尾の狐の血を引く、由緒正しい神社の娘。
代々守護者として仕えてきた一族の僕は、神社の巫女である彼女には本能的に逆らえない。
結局今日も僕は自分の気持ちにフタをしたまま、されるがままに悶々と過ごすのだった……。
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