第56話

僕は荒れた。静かに、荒れた。

呑んで、呑んで、飲んで、のんで。

朝昼晩、起きたら飲んで、酔っ払って寝る。

ねぐらはないんだけど、空調の効いたこの時代はホームレスには最適だ。

数日風呂に入らず、着換えも持ってないからもっぱらコンビニで酒を買っては飲んだ。

ろくに食わずに。それでもこの若い肉体は、血を吐く事はなかった。

前の時代みたいに。

公園を転々としていた。夕暮れ、ベンチに寝転んで朦朧、車のドアの音。まあじゃないかと毎度目が覚める。何を今更、彼女を待ってんのか?逃げ出したくせに。まあが立っていた。

横になってる僕に涙をぼろぼろ落として。

「見つけた。探すの、すごく大変だった」

僕は咄嗟に逃げようと半身起こした姿勢で二三歩、足がもつれて転んだ。酩酊していた。

「ああ、まあちゃん。僕はダメだ。ダメなんだ」「どおして?」「失敗ばっかりだ。自業自得なんだ」「そおだとしても、わたしは?わたしはどうなるの?」「きみには僕なんか、居ない方が良いよ」「どおして?」「だって、僕はどうせまた失敗するから」「そうだとしても、失敗は成功の元だよ。わたしシメイくんの小説、いつもそう思って勇気もらって、それ書いてるひとがそばにいて、幸せだったの」「僕はおっぱいは性交のもとって書いてるんだ。読み違いだよ」「それでもわたしにはそうなの。いっぱい失敗したから、成功出来るんだよ、きっと」「ん、待てよ?おっぱいがいっぱいなのは隠してても変わらなかったのに、隠さなくなって性交に結びつかなくなった。僕はそれを書いている。まあちゃん!ありがとう。なんか、少しわかった気がするよ」まあをきつく抱きしめた。

ドン、と突き飛ばされた。

「くっさ!獣の臭いがするよ。お風呂入って来なさい」「はあい」

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