第7話

iに「もう良い」と伝え、しばしボーッとする。

何故か解放運動とその後の歴史、少子化の危機的局面については知っていた。

そして、もう遠い昔に婚姻制度は風化して、男は種付けすれば国から手当を貰えて、女は妊娠・出産に多額のボーナスを得て育児には国から様々なバックアップ制度があるにも関わらず、セックスをする者は少ない「無婚自慰社会」に陥ってる事も。

しかしそれらの知識は、軽いデジャヴュというか、誰かの描いた御伽話みたいな感じで、まるで現実感がなかった。そら、何百年の歴史の中の事だから当たり前かな?学校ででも習ったんだろうか?

学校…

おかしな事に、この世界で学校に通った思い出が一切なかった。

僕は記憶喪失かなんかなんだろうか?

「なあ、i、いや、君の名前、まみちゃんだったね。まみちゃん?」

「なあに?」

「いったい僕は、誰だっけ?」

「何を仰るヌートリア。あなたは○○○○じゃない」

そうだ、僕は○○○○。

昭和46年生まれの52歳。

「あなたは23歳よ。種馬紹介所から通信デス。仕事の依頼かな?出マスカ?」

「うん、出てみるよ」

画面が切り替わり、なんとなく見覚えある様な30前くらいの男の顔。

「○○くん、おはよう。昨日はどうも。どうやら元気そうだね」

「すいません、どっかでお会いしたでしょうか?」

「まあ無理ないか。オレだよ、オレ」

「すいません、わかんないす」

「ヒロシだよ!ヒロシ」

えええ、髪がふさふさじゃないか!

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