第45話 私の幸せなインテリア・パレット


 新調したスーツを着て、イヴリンがドアの前に立つ。


「行ってくる。パレイ」

「行ってらっしゃい」


 イヴリンが行く前に唇を重ねる。すると、イヴリンがあたしの腰を抱き、どんどんキスが深くなっていき、あたしは困って、慌ててイヴリンの胸を押した。


「と、止まらなくなるから!」

「離れるのが寂しい」

「……あたしも寂しいけど……ご飯作って待ってるから、ちゃんと帰ってきてね?」

「パレイ、もう一回」

「あん♡ イヴぅ♡」


 イヴリンが出かけた後は、S.Jとマリモを乗せて、スクーターでルセ・ルートへ向かう。途中で、空を飛ぶドラゴンを見つけた。ドラゴンは自由に空を飛び、山の方へ飛んでいく。すると、S.Jも感化されたのか、小さくなった体のままあたしの横を飛び始めた。それをマリモは不思議そうに眺める。


 ルセ・ルートに入った。

 町は今日も平和そのもので、働く人で溢れかえってる。


 貸本屋のジョーイと目が合い、手を振った。


「おはようございまーす!」

「ああ、おはよう。気を付けてな」


 通学路では、子供たちが歩いてる。歩いてたマリアとローラと目が合い、手を振った。


「おはよう、マリア! ローラ!」

「おはよう! パレット!」

「ダンに、今日こそ学校サボるなって伝えておいて!」

「言っておく! いつもごめんねー!」


 学校の窓から、平和なルセ・ルートを校長が見つめ、笑みを浮かべた。


 あたしは再びスクーターを走らせると、工具を持って走る大工たちに会った。


「おはようございまーす!」

「よぉ。嬢ちゃん」

「おはよう」

「けぇ! おはよう! 嬢ちゃん! 朝から元気でいいなぁ!」


 ベン達の横をスクーターで走り抜く。

 喫茶店のマスターが箒で掃除している前を通る。


「おはようございまーす!」

「おはようございます。エミーに頼まれてたケーキが届いたと伝えてください」

「伝えておきまーす!」


 スクーターが道を走る。町の真ん中に設置されたテレビから、マゴットの姿が映る。


『グッドモーニング! おはよう、四つの町に住む諸君! ママの笑顔が輝く素晴らしい朝だ! 今日の視聴率も、マゴットが独り占め! さて、今朝のグッドニュースのタイムだ! なんと……ドラゴンの卵が孵ったよ! ひゃー! きゃわいいー!』


 ゆっくりと道を歩くエマを見つけ、慌ててスクーターを止める。


「エマさん、どうかしました!?」

「あら、おはよう。マリアを送った途中なの」

「歩いて大丈夫なんですか?」

「平気。仕事復帰はもう少しかかりそうだけど」

「無理なさらないでください。マリアが頑張ってくれてますし、在宅でやってくれてる作業もとても助かってます」

「もう少ししたら行くから、待っててくれる?」

「もちろんです!」


 青空の下で、スクーターを走らせる。もう少しで辿り着く。あたしの理想が詰まった場所。S.Jがその先にいる人物を見つけて、飛び出した。

 ライアンと歩くエミーが悲鳴を上げて避けた。エミーの悲鳴に気づいたダンが振り返り、飛びついてきたS.Jを受け止めた。


「うわ! S.J! 朝から元気だなぁ!」

「ギュウウ!」

「エミー、ライアンさん、おはようございます!」

「おはよー」

「おはよう」

「エミー、学校は?」

「みんなコンクールの作品づくりで忙しいのよ。店でやっていい?」

「もちろん。材料ある? 取ってこようか?」

「赤色が欲しい」

「オッケー」

「知り合いの大工が面接を受けたいと言ってた。今度連れてくる」

「はい! ぜひお願いします! ……ダン! ローラが学校サボるなって怒ってたよ!」

「サボってねぇし! ちょっと遅刻してるだけだし!」

「学校ちゃんと行かないと店にも来させないよ」

「うるせぇな! 今日はちゃんと行くよ!」

「うん。終わったらおいで」


 ダンの顔を覗き込む。


「学ぶことは、ダサいことじゃないでしょ?」

「……俺、調合の勉強したいのに……」

「学校の勉強優先。ほら、もう行く」

「S.Jを店に置いたら行く」

「もー、遅刻しても知らないよ!」

「朝からうるさいぜ。な? マリモもそう思うだろ?」

「ふ!」

「マリモ、同意しない」


 あたし達は理想郷へ歩いていく。たどり着けば、あたしはその扉に触れた。開くと、たちまち理想の部屋で出来た店内が視界に入り、S.Jとダンが中へ入り、エミーが中へ入り、ライアンが中へ入った。


 先に入ってたダンが戻ってきて、あたしを覗いた。


「なあ、パレット、母ちゃんがプラン制度で言ってたことがあるんだけどさ」

「ん? なーに?」


 あたしとマリモも、中へ入った。扉が閉められたが、安心してほしい。札はいずれひっくり返され、OPENとなる。


 皆の理想が詰まった店。

 皆が笑顔になって、幸せになる店。



 インテリア・パレットは、今日も個性豊かなメンバーで、開店する。








 私の幸せなインテリア・パレット END

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