色眼鏡について

鶴川始

特攻1.5倍じゃなくて半減相手に2倍になる方

「やあ少年、今日もまた会ったね。君はここがお気に入りの場所なのかい?」


「『男子を少年と呼称するタイプのミステリアスな雰囲気の年上の美人のお姉さん』ごっこに付き合うのもやぶさかではありませんが、しかし一週間連続となるとそろそろしんどいものがあります、先輩。あとここはお気に入りの場所とかではなく部室です」


「おやつれない対応だね、なにか悩み事でもあるのかい」


「三秒くらい前に全部説明しました」


「なるほど、色恋の悩みか……」


「耳か脳腐ってんのか? 両方か?」


「告白あるのみ。ガンバ!」


「無理矢理誘導した上に膨らます気ねえのかよ」


「なんかイメチェンとか挑戦してもいいかも。試しにティアドロップのサングラスとかかけてきてみたら?」


「高校生が!? ティアドロップのサングラスを!?」


「君前に鈴木雅之好きだって言ってたじゃん」


「好きなのと実際かけて似合うかは別問題で、鈴木雅之くらい渋くならないとキツイですって。ていうか似合ってても高校にサングラスかけてくるのはちょっと」


「まあサングラスかけてくる高校生なんてヤンキーしかいないだろうからね」


「いや、目を守る必要があるとかでサングラスかける人とかもいますけどね……」


「ところでサングラスのことを昔は色眼鏡と云っていたらしいね」


「ああ……まあそうですね。実際に聞いたことはないですけど」


「色眼鏡というと私が思い浮かべるのは、レンズに色が入ってる眼鏡よりも、一昔前に劇場などで配っていた、3Dに見えるって触れ込みの片方赤色で片方青色の詐欺商品なんだよなぁ」


「いや、アナグリフはれっきとした表現技法のひとつでしてちゃんと3Dに見えるもので……そもそも最近の劇場で配ってる3D眼鏡は仕組みが全然違う奴ですよ、そうじゃなくって、偏見とか先入観とかもって物事を見るって意味の方の色眼鏡ですよ」


「今のは色眼鏡3Dメガネに対する色眼鏡偏見っていう高度なボケだったんだが」


「お眼鏡に敵わなくてすいませんね!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

色眼鏡について 鶴川始 @crane_river

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ