君色に輝け
文月みつか
第1話 灰色の文化祭
今年の文化祭のテーマは『
したがってクラスの出し物に関してもこれといった案が出て来ず、決まらないうちに生徒会への申請期限の日を迎えた。
「もう休憩所でいいんじゃない? 机と椅子並べるだけだし」
誰かが言ったそんな投げやりな一言が危うく採用されかけたが、それではあまりにも味気がないという少数派の意見もあり、最終的には縁日に見立てたスーパーボールすくいをやることに決まった。それこそド定番でありきたりだが、準備するものが少なくて簡単なので、まあやりたい人だけ集まってやればいいんじゃない?ということで落ち着いた。
ほかのクラスが和気あいあいと青春の1ページを刻む中、1-Dの面々はほとんどがいつも通りにだべったり遊んだりして過ごし、貴重な非日常を経験する機会を浪費していた。かく言う俺もその一人である。
文化祭前日。準備のため、完全下校は普段よりも遅い夜8時まで引き延ばされているが、1年D組のクラスメイトは大半がとっくに下校していた。もちろん俺もそのつもりだったが、下駄箱を通過したところで卓球部顧問の桂木に見つかってしまい、体育館へと連行されて風船の飾りつけを手伝わされた。今年のテーマにちなんでカラフルな風船をふんだんに使うそうだ。誰だよ『
ようやく強制労働から解放されたあと、せっかくだからほかのクラスの仕上がり具合はどんなものかと高みの見物をしに1年の教室へと向かった。
A組はゾンビだらけのお化け屋敷、B組は本格謎解き脱出ゲーム、C組は不思議の国のアリスに見立てた喫茶店。まだ製作途中のようだが、どれも手が込んだ力作になりつつある。
引け目を感じた。同時にうらやましくも思った。やる気がないのは俺たちだけだったのか……今さら何を言ってもしょうがないが。
一応D組のほうも見ておくか。今のうちにこの落差を体感してショックを受けておこう。そんな気持ちで、すでに消灯されていた1-Dの教室の電気をつけた。
すると――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます