デバッカー転生 〜突如神様から新しい世界を作れと言われた俺たちは、世界を作ったが、バグまみれで修復するハメに⁉︎〜

@tottttti111

第1話 新世界⁉︎

 頭が痛い。

 目が覚めて第一に思ったことは、そんなことだった。

 だけど、どこか胸の内は晴れやかで、体が軽く感じられた。

 そんな軽くなった体を起こし、あたりを見渡す。

 何もない空虚な世界。そこに、一人、俺の友人の佐伯(さえき)がいた。倒れているが……。

 高校からの知り合いで、何かとバカをやっていた。たまにガチになって怪我することもあったっけな……。

 ……なんで俺は感傷に浸っているんだ? ていうか、早く起こさないと!

 

「おい! 佐伯! 何やってんだ起きろ!」

 

 体を揺さぶり必死に声をかけると、ナマケモノのような鈍い動きで起き上がる。

 目をこすりながら「今何時?」と、呑気なことを言うのがなんか逆に安心できて、ため息混じりに、

「周りを見ろ」と言って視線を周囲に誘導した。

 佐伯は寝覚が悪い。きっとこの心地よさも悪さして、まだ夢の中だと思っているのだろう。

 数秒、目を細めて周囲を確認すると「どこここ⁉︎」と大袈裟なぐらいのリアクションをした。

 

「俺にも分からん。精神と時の世界……、的な?」

「だとしたらもっと清らかで品格があるだろ!」

「確かにな。俺たち相当品格あるもんな」

 

 冗談か冗談じゃないのか分かんないテンションで会話をしている。

 こんな異常事態に置かれても、冗談を言えるのは、一人じゃないと言うことと、まだどこかこれが夢だと思っている節があるからだろう。

 戸惑いつつもどこか冷静な俺たち。そんな俺たちの耳に、突如、しゃがれた声が入ってきた。

 

「ここは、天界の最果てじゃ。お主たちは現世で死に、ワシがここに招いたわけじゃ」

 

 しゃがれた声は、全くもって訳のわからないことを口走った。

 いきなりのびっくり情報に、完全に脳がショートする俺と、メガネをかけていないくせにメガネを正すような動きをした佐伯。

 佐伯は、「つまり、俺たちは死んだということだな?」と誇らしげに言った。

 

「……え、今言ったじゃん」

 

 しゃがれた声は冷静に返した。もう一度、メガネを正すような動作をした佐伯は、

 

「なるほど。で、何をすればいいんでしょうか? 樋口由羅(ひぐちゆら)と殺し合えばいいと言うことでしょうか?」

「なんで急にフルネームで呼びやがった⁉︎」

「突っ込むとこそこ⁉︎」と、しゃがれた声は俺たちのペースに翻弄されているようだった。

 

「でも実際、どうして招かれたんですか? 俺たちは……」

「倒置法いいね」と佐伯。

「ありがとう」

「あぁ、まぁ、簡単に言うと君たちに新しい世界を作ってほしくてねぇ」

 

 『新しい世界』。甘美な響きが虚無でただ広いだけの空間にポツリと落とされた。

 佐伯はまた例の動作を繰り出した。俺は息を飲んだ。

 わけがわからない。訳がわからないが、高揚していた。

 あっけに取られ、微動だにしないでいると、しゃがれた声は言った。

 

「どんな世界にするかは自由じゃ。魔法なり何なり、好きに作るがいい」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 唐突すぎて何が何だか……。えぇっと、世界を作る? 救うとかじゃなくて?」

「あぁそうだ!」となぜか迫真な佐伯。

「なんであっち側なんだよ⁉︎」

 

 と言うか、今更だけど、天界とか、新しい世界とかってこのしゃがれた声の正体って神様とかそう言う感じのやつってことだよな⁉︎

 

「いかにも、お主らには新しい世界……、『新世界』! を新しく作ってもらう。異論はあるかね?」

「色々ありますよ!」

「異論だけにね」

「ちょっと黙ってろ佐伯ぃ!」

 

 話が突拍子もなさ過ぎる! 大体なんで佐伯はここまで冷静なんだ⁉︎

 そう思い、佐伯の様子を見てみると、佐伯は口をぽかんと開けたまま虚を見つめていた。

 そうだった。こいつバカだった!

 

「なんで特に才能があるわけでもない俺たちをそんな重要な仕事を任せるんですか⁉︎ 見てくださいこいつのアホ面を!」

 

 声を荒らげ反論する俺に辟易してきたのか、深いため息をついた神様らしき声は、重々しい口調で言った。

 

「仕方ない。お前たちのために言っていなかったが……」

 

 な、なんだ? 空気が変わった……⁉︎

 ま、まさか実は俺たちは元々神様で……、とか、秘められた才能が——!

 

「お前たちは、『叩いて被ってじゃんけんぽん』で勝負をしているうちにマジになって、死んだ」

「ふぁ?」

「そんな面白い奴らが作った世界はどんなもんになるかと気になってなぁ〜」

 

 と、どこか嘲笑混じりに言った。

 

「まぁ、猿でもわかる世界の作り方ブックがあるから……、あ? こんな分厚かったか? まぁいいか! ほれ、これだ」

 

 と、どこかから落とされた広辞苑ぐらいの厚さの書物。表紙にはヒョロヒョロな頼りない文字で、「猿でもわかる新世界創作説明書!」と、猿では到底理解できないであろう漢字の羅列が書かれていた。

 ふ、不安しかねぇ……。

 

「しゃあ! やるぞ!」

 

 なんで佐伯はこんなに順応してるんだ? 某呪いの、ま⚪︎ーらかよ……。

 

「あ、あとついでに言うと、期限は一週間だからよろしくなぁ〜」

「はぁ⁉︎」





【あとがき】

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