ノンフィクション-おてんばうさぎと夫婦の暮らし

@otto_xyz

第1話

ノンフィクション-おてんばうさぎと夫婦の暮らし


「一目惚れしました、よかったらお話ししてくれませんか?

ちひろは、いわゆるマッチングアプリで、今まさに一目惚れした女性にメッセージを送った。

ちひろと言っても、男性だ。

いつも名前で勘違いされる。そんな人生既に慣れてる。子供の頃は少しいやだったな。けど今は気に入ってる。良いネタになるし人によく覚えてもらえる。ハタチの頃に振袖のDMが来た時は友人に受けたっけな。

「ひろか」というメッセージを送った女性から、返信はなかった。

無かったのだが、ちひろは諦めが悪い男なのだ、再度追撃のメッセージを送る。

「好きな食べ物はなんですか?」自分のマイペースさが伝わる良いメッセージだと思う。

話に辻褄が合わない部分もあるが、これで返信が来ないようならこんな私みたいなマイペースな男は元より合わないんだろう。


「はじめまして!」

ひろかさんから返信がきた。好きな食べ物はカレーだという。早速カレー屋を探す。

私は長崎にきて、まだ日が浅いが仲の良い同僚にどこか良いところがないか聞くことにした。

聞くと「ガリバー」というカレー屋が人気のようだ。故郷茨城から上京し、夢破れて、流れ流れたどり長崎についたガリバー冒険家のような生き方をしている私にはぴったりの名前だ。

店を予約し、約束を取り付けた。

それまでまた脳みその機能を一旦停止して馬車馬になって働こう。髪も切ろう。楽しみである。


髪を切った。ツーブロックにしてみた。今でもツーブロックは好んでしている。特に好きな髪型ではなく、アトピー肌に薬が塗りやすいからツーブロックにしているだけだ。だが、ツーブロックはしっくりくる。ネットで誰かが言ったがちょんまげの真逆が現代のツーブロックなんだとか。昔から日本男児は剃り込みが好きなんだなと思った。

と、待ち合わせ場所のガリバーの窓ガラスを鏡にしてどうでも良いことを考えながら髪をチェックし直していると、ひろかさんからメッセージがきた。

「今どこですか?」

近くにいること。青シャツに白Tであること。自分の服装を伝える。と思ったらシャツのボタン全てを止めていたことを忘れていてシャツのボタンを外していると「あの..」とひろかさんが現れた。


「ちひろさんですか?」

「はい」

「ひろかさんですか?」

「はい」


お互い人見知りが表れる会話内容だった。

そんな2人がこの後スピード結婚してひろかも東京に来ることになるなんて思ってもみなかっただろう。


2人はカレーを食べた。ウィンナーにチーズが入った実に美味しいカレーだった。と思う。

初めて食べた時は味なんて覚えていないし、お水もいっぱい飲んだとおもう。手持ち無沙汰になってもスマホを触るのはNGとどこかの雑誌に書いてあったのでそのまま待っていた。

今ではポチポチいじっては怒られているのだが、

この時は初々しかったのだ。


ひろかはすごくすごーく食べるのが遅かった。

今では慣れたが、今まで出会った中で1番食べるのがゆっくりな人だった。今でも変わらず遅い。


会話も弾み、その後カフェにも行き、次の約束をした。YUIという女性アーティストのライブに行くことになった。

ライブ中手を握ろうとした...らしい。

正直覚えてないが気配を感じたとひろかからの後日談。


次にお笑いライブもいった。アフロがツッコミのコンビだ。とても面白く良い雰囲気になれた。2人ともグッジョブである。

なんだかんだあってお笑いライブの帰り際に付き合うことになった。

ひろかさんから

「私のことどう思ってますか?」


と、下から覗くような見てくる顔だ。これは今でも使ってくるひろかの良くある顔の一つだ。


その後付き合うことになって。初デートは動物園だ。動物園の後に告白しようと思ってたが、計画通りに行かないのが人生だ。

今まで計画通りに行かなかった人生だった。そういう星の元に生まれたきたのだと会う人々に言われてきた。自分で計画するが、良い流れに身を任せるのがいちばん良いのだ。

これからも良妻賢母のひろかの流れに身を任せて生きていく。結婚生活という海の航路に流氷が突如現れたときのみ舵をとるのだ。それ以外は浮き輪に紐をつけてひろかの跡を辿るだけ。それが幸せである。


そんなこんなで付き合ってから1189日、結婚してから875日経つ。幸せだ。子供はまだ居ないが充分幸せである。今現在は、妊活・不妊治療中である。

この執筆は不妊治療奮闘記だが、書物のジャンルは「お笑い・コメディ」である。よく泣く時もあるが通算では笑う時の方が多いのだからお笑いジャンルで間違いない。

子供が授かったら育児奮闘記に早変わりし、イクメンとしてSNSを賑わせたい。ちひろの野望は尽きないのだ。


付き合ってから2ヶ月ほど経ち、私はあることを

言い出せずにいた。現在契約社員で長崎で働いているが、次の仕事は東京で検討していることをひろかさんに言えなかった。

ある夜に打ち明け、さらに結婚前提で付き合いたいこと、東京について欲しいことを告げた。ひろかさんも承諾してくれた。心の中でガッツポーズだ。

結婚3年目の自分からは2人とも若さ溢れて可愛らしく思う。

そして、この後のコロナ禍のことを考えるとここで移住の決断をしていなければ今2人は一緒に居なかったんだと改めて感じる。

その時は直感を信じて突き進んだけど、「イマ」

を大切に生きる素晴らしさを過去の自分に学んだ気がした。


さて、東京に移住することに決まったら

色々大事な手順、嫁を貰う「段取り」が生まれる。

これは男として生まれたからには一度は通る。大事なフラグだ。逃げてきたことは多い自分も逃げ道がないと開き直って行動できるもんなのである。


その日は、ひろかがアパートの近くに車で迎えに来てくれた。緊張して乗る。

ここまでの道のりはあまり覚えていない。覚えているとすると坂が多かったことくらいだ。

辿り着くと手土産を持って先にひろかさんが行き。

続けて入る。

「おじゃまします」


この時覚えていることは、手土産のお菓子とお酒を渡したこと。服を全て新調したため動きづらかったこと。帰りに膝をつけてお義父さんが娘をよろしくと送り出してくれたことだ。

とどのつまりとても良いお義父さんだった。過去を悔やむように話す場面があったが「イマ」を大切にする生き方が素晴らしいのだ。20代のちひろがこちらを見てわらって親指を立てているように思えた。


さあ、それからというものお義父さんから娘をもらうという人生の節目を終えた私は「無敵」だった。

一足先に上京し、試験採用期間を経て無事本採用された。

本採用後の役員との面談では、詳細は忘れたが、これから遅れて上京する彼女と結婚したいからバリバリ働きたい旨を伝えると、

来週末に両親の顔合わせし、次の週に婚約すると告げると若い2人のスピード感に役員の方達は笑ったが、この男だったら大丈夫だろうととやかく言われず歓迎してくれた。


そしてXデーがきた。

ひろかさんが東京に来る、白いおてんばうさぎを連れて。予想だにしない。2人と1匹の同居生活がスタートした。


私は小さい頃に犬を拾った。拾った犬を父と散歩していたら犬が猫を見つけて拾って今私の家は猫屋敷になっている。母の生きがいでもあるので口出しはしない。父も鳥を飼ったり、ハチを拾って飼ったり、私も鳥を河原で拾ったっけな。


前回書き込んだのが1月2日だから3ヶ月と3週間たって現実は忙しなくなっている。

夢が現実になったのだ。

怪我の容態は悪くなり2ヶ月家でゴロゴロ過ごしていたのだが、人生は好転したのだ。

赤ちゃんを授かったのだ。明後日には戌の日参りに行く予定だ。

副業も二つ決まり、一つ目も順調だ。二つ目は転職活動にも有効なので確実にチャンスはつかみにいきたい。

そうか1月の私は小さい頃動物を拾った話をしていたが、それは生きていた動物に限らない。死んだ動物を拾って埋めることもしていたっけな。友達には引かれたら、将来良いことあるよと言われたがその時のツキがようやくまわってきたのかな。

いろんなこと経験しておくもんだね。


話は現在に戻る。私は長崎行きの新幹線を品川駅で待っている。今日からいよいよ久しぶりに妻とそしてこれから息子と一緒に暮らす生活がやってくるのだ。その感動を忘れないように記しておく。

時間は刹那で流れていくとはこういうことなのか。と思う。


赤ちゃんを授かったところまで、書いたっけな。

赤ちゃんを授かってからは生活も仕事も無我夢中でやっていた。

仕事も2ヶ月ぶりに行ったら知らないうちに職員が辞めていたり自分の仕事共に、今の仕事環境に今の身体で慣れるようになるまで苦労したな。


リハビリもほぼ毎日いった。仕事との両立。

怪我をしたうえで仕事をしても、仕事では別に評価は変わらない。むしろはやく復帰を催促されていた。こういう部分で離職率が高いのだろうと感じられた。

仕方ないが、皆痛みを訴えるものに見慣れすぎているのだ。

轢かれただけの事故だったが、被害者は面倒で時間がかかる。ストレスの掛かり具合から自分が加害者だっけ?なんで自分ばかり色々気にして、迷惑かけてることに周りに気を配らなければならないのか。

消耗していく日々だった。

加害者はスパッと謝り、保険会社に任せるだけでほんとうに楽だろうなと本当にそう考えていたよ。


さて、赤ちゃんを授かってからパパママ一年生の我らは毎日がドキドキしてすごした。

まだ肌寒いのでもこもこ靴下。暖かい服。環境つくり、ひろかは本当に気を休める暇はなく大変だったと思う。今も今でもとても大変なんだから女性というのは本当に尊敬にあたいする存在なのだ。


春を迎えた時は少しホッとするとともに、里帰り出産の準備にさしかかる。

このあたりで出産に立ち会えない思いを押し潰しつつコロナ禍ならこれが最善なのだと。パパママ学級などにも一緒に行ったよね。赤ちゃんの人形を持った時は生をまだ感じられなかった。が、この重みを感じられら日々がくることを期待して日々を過ごしていた。だっこは上手だったが沐浴のやり方は注意されたっけな。こらからやる時もひろかに教えてもらいつつがんばればいいよね。うん。

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