散歩の夜
こんぶちゃ
夜の中
死んでしまいたい、と思い暗い闇の中、外に出た。夏は嫌い。息が出来ないほど暑苦しいもの。
「早く冬になんないかな」
ぷらぷらと夜風に当たりながら散歩をする。冬は好き。真夜中に見る真っ白い景色は本当に綺麗で、それだけで非日常感を味わえる。それに、雪だるまを作るのは楽しい。
それなのに夏ときたら……
夏の悪口を考えながら石を蹴って歩く。コツ、カツ コツン と 乾いた音が夜に響く。
夏の夜は好きかも 静かで、涼しいし
「あ。」
蹴った石の先に、蝉が転がっている。動かない。なんなら蟻が這っている。傍によってしゃがみ、手を合わせる。「天国で会おうね」
わたしは地獄行きかもしれないからやっぱり会えないかも
あ、埋めた方がいいのかな…
でも 君はもう、蟻のお家へ運ばれるんでしょう?邪魔はしないでおこうかな
しばらくセミと蟻の行方を見守っていると、カンカンカン…と遠くで踏切の音が聞こえた。踏切の側まで歩いて、道の橋に座る。音のする方を眺めていると、貨物列車。ガタンガタンと鳴る心地よい音を聞きながら目を瞑る。ちょっとだけ、眠くなってきたかも。スマホの画面を覗くと25時半過ぎ。列車の背中を見送って、欠伸をしながらゆっくり立つ。バイバイ、と蟻へ手を振り家路に着く。
「死に損ねたな…」などと呟きながらドアノブを回し家の中へ足を入れる。
今日は駄目な日だ。
散歩の夜 こんぶちゃ @conbutea1
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