願いごと天使

日彩

第1話

紙が落ちてきました。どこからでしょう、風も無いのにふわふわと、まるで雪が降るように次から次と、白い紙は空から舞い降りてきます。

町の大きな教会やお城の上、人々が集まって見上げている広場にも、降り続いています。


 大きな教会のお坊さんの目に留まりました。

 その紙には、こう書いて有りました。

「もうすぐ、願いを叶える天使が現れます。

広場にお集まりください。 天使は古い噴水台に現れます」

「何てことだ」お坊さんはあわてて国王や大臣を呼びに行き、一緒に広場に出かけました。


 広場はたくさんの人々で、近寄る事も出来ません。 「どけどけ」王様の家来が怒鳴ります。 「王様の願いが一番に叶えられるのじゃ」その次は大臣、お坊さん、この国のお金持ちと、家来や召使を連れいばった者たちが続いて入ってきました。 

  

 さあ、いつ天使が現れるのでしょう?大勢の人達が集まった頃、降り続いていた紙はすっかり消えてなくなっているのでした。

古い噴水台の周りに王様や大臣、金持ちや権力を持った偉い人達が陣取りました。


 古い噴水台には、美しい女神の像が彫ってありましたが、 今も続いている戦争の為にあちこちが壊れ、前には美しい虹をかけ噴き出していた水は、一滴も出ないのでした。



どれ位経ったでしょうか、皆が本当に天使が来るのか疑い始めきょろきょろとあたりを見回し始めたころ、噴水台の近くに見慣れないおばあさんがいるのです。

「私が天使だよ」と老婆は言います。

教会に有る絵のように綺麗ではないし、年を取り過ぎており、よぼよぼで痩せこけて、羽も無いのでした。


そして、着ている服はまるでボロボロのぼろ布みたいです。 

「何だって・・・・」「 お前のような婆さんが天使のはずは無いじゃないか」

皆は笑い始め、中には騙されたと怒って帰る人もいます。


「無駄な時間を過ごしたわい」王様はかんかんです。 そして、「もう二度と天使だと言って人を集める事は許さん」 と言ってお城に帰っていきました。


いつの間にか、ほとんどの人たちは居なくなり、古い噴水の前に居るのは、自分が天使だと言っている老婆と、一人の女の子だけになりました。

 その女の子の腕には、ぐったりとした白いウサギが大事そうに抱かれているのでした。

 

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