LETTER:Fromリクニス
カエデ、ミレット、ぺリラへ。
お手紙ありがとう。色々近況が聞けて嬉しかったよ。
みんなのお手紙に返事したいところだけど、まずは私の近況から伝えるね。……あんまり細かいことは言えないんだけどね。この手紙もアメミットのチェックが入るから……あの人……神様? 結構細かいんだ。こんなこと書いたら怒られるかもしれないけどまぁいいや。
私はね、ここ二年、ダンジョンの管理者の人達と一緒に、効率的なダンジョン運営について考えて、色々改善の手を打ってた。
いやー大変だったよ、だってもうバランス調整とかめちゃくちゃなんだもん。思いつきで適当に魔物配置してるし。魔力はやたらあるもんだから思い通りに作れちゃうのがさらに良くないよね。力ばっかりあってもダメだよやっぱ。
実際に二階まで進んだ経験や、これまでの冒険者としての実績から、ダンジョンの問題点を片っ端から上げてね……最初はぜんっぜん話通じなくて大変だったけど、まぁ少しずつ丁寧に伝えて言ったらだんだんわかってくれたよ。
最初はお願いして管理者たちにやってもらってたんだけどさ。そのうち面倒になったらしくて権限いっぱい付与されて。課題から改善案出して実際に修正して動作チェックまで全部やらされてたの。もーめんどくさかった。まぁ指示出してやってもらうよりはマシだったけどね……色々迷宮操作に関する魔術も覚えたし、魔力も大量にもらったからなんか肉体的には全然老化してないんだ、ここ二年。それはうん。ラッキーだったね。
んで、ダンジョンを大改革したあとは知っての通り、カイルさんと連絡を取ってもらって、冒険者にたくさん来てもらうように色々交渉をしたんだ。せっかく頑張って作っても、来てもらえないと意味ないし、管理者たちの目的も果たせないからね。
別に冒険者わざわざ呼ばなくてもいいんじゃ? って思うかもしれないけどさ、ここの管理者たちの目的って、『死』をいっぱい味わうことなんだ。悪趣味だけど、そういう生き物らしい。でもそれを実際にやると、争いにしかならないでしょ? だからこうしてダンジョンを造って、疑似的な死で欲求を満たすことにしたんだって。彼らなりの妥協点らしいから、まぁお互い何とか利益の出る形に着地をさせたいよね。
ただ、冒険者のみんなには安心して死んでもらえるようにしないといけないから……書いてて何言ってるんだって感じだな、この文章。でもまぁ事実だから仕方ない。とにかく、いっぱい死んでも、肉体や精神に悪影響がない形にしないとまずいな、とは思ったんだよね。元々は結構依存性が高かったりして危なかったから、その辺は割と調整を入れたんだ。
で、まぁ色々あって、カイルさんにも納得してもらって、冒険者が安全に挑めて、かつ訓練にも使える、みたいな今のダンジョンの形がようやく出来上がったわけ。まだまだ作り途中だけどね。
そんな感じで、忙しい毎日だったよ。仕事仕事仕事。たまーに外に出てもいいよとは言われてたけどさすがに町にはいけないしね。正直……寂しくはあったな。
あぁ、ごめんね。仕事の話ばっかりになっちゃった。ここから上は飛ばしてもいいからね。
えっと、まずは、カエデの手紙から。
剣を教えてもらえる人ができたんだね。刀使いで強い人だと、S級冒険者のあの人かな。すごいね、いい師匠だ。
カエデが楽しそうで良かった。そっかーみんなもう十八かぁ。どんなふうになっているのかな。きっと綺麗になってるよね。今から会うの楽しみ。
ワンピース、わざわざ待っててくれたんだね。ありがと。私もずーっとここに籠ってて最近の流行りとかよくわからないからさー、町戻ったら一緒に買いに行こ。お給料はいっぱいもらってるからね、任せといて。
次ね。ミレットの手紙。
教会で働いてるんだねー。忙しいだろうに偉いなぁ。ご飯はね。一応ちゃんと食べてるよ。最初用意されたものは全然口に合わなかったから定期的に材料調達して来てもらって自分で作ってる。偉いでしょ。
運動もまぁ、ダンジョンのテストは自分でやるから、それなりにはしてるよ。でも、若くはないは余計かな! 知ってるけど!
うん。みんなでご飯に行こうね。楽しみだ。
そして、ぺリラ。
手紙読んで笑っちゃったよ。喋り方とか全然変わってないね、懐かしくなった。
三人ともそうだけど、それぞれちゃんと新しい人間関係ができて良かったねぇ。先生は嬉しいよ。
あと、家ね。確かにずっと町にいるなら、広い家あってもいいかもねぇ。ちょっと真剣に考えるわ。うん。それいいな。楽しそうだね、四人で暮らすの。
さて、みんなもうすぐダンジョンの十階に挑むことになると思います。
結構難易度は高いし、ボスも強いけど、成長した三人なら絶対勝てると思ってるから、頑張ってね。待ってるよ。ちゃんと仕事は区切り付けて、すぐ戻れるようにしておくから。
……囚われのお姫様なんて、柄じゃないし、年齢的にもまぁまぁきついけど。
カエデ、ミレット、ぺリラ。
私をここから連れ出してください。
待ってるね。
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