終章:リトライダンジョン

LETTER:From カエデ

 センセ、今何しとるん? ウチはまぁ元気にしとるよ。


 センセがダンジョン運営になってから二年。最初は悲しいしムカつくしどないしたろうと思ってた。


 でも、カイルさんとか、色々な人と話して、センセはセンセなりにウチらやこの町のことを考えて最善を尽くしたんやなと、わかってはきた。なんかもうちょいうまくやれんのかなとは思ったけどな。


 実際、『不死のダンジョン』は前と比べてもずっと挑戦しやすくなって、活用する人も増えとる。


 ルールもわかりやすくなったし、難易度も無茶言われることはなくなった。死の恐怖を理解できて、実際には死なないっちゅうことで、なりたての冒険者の訓練におすすめされるくらい安全な場所として知れ渡ったみたいや。


 センセが頑張って調整したり、カイルさんと色々書面でやり取りをしたり、色々やった結果なんやろ。センセやっぱ仕事はできたんやな。あんま強くはなかったけど。


 ウチら三人もダンジョン攻略は進めとる。でも魔術師がおらんから結構苦労はあって、段々進むの厳しいなって思ったから、色んな人にお願いして鍛えてもらうことにした。あぁ、あくまで鍛えてもらうだけや。パーティにはいれとらんよ。うちら四人以外嫌やもん。


 ウチはな、東側出身の刀使いに強い人がおって、色々教えてもらうことになった。……いやホンマ、自分は強いと思ってたんやけど、化け物っておるんやな。現実を突きつけられたけど、定期的に稽古つけてもろてる。自分で言うのもなんやけど、相当強くなってるでウチ。


 他にも魔術の訓練をとか、ダンジョン以外の冒険にもちょいちょい行くようになった。三人で行くこともあれば、他のパーティと一緒なこともある。ダンジョンに慣れすぎると、命の感覚がおかしなるから、そうならんようにって言われてな。


 前はずっと四人でおったけどな、今はみんなそれぞれ世界が広がった。三人で行動しない日も増えた。なんやかんや、毎日楽しいで。


 でもなセンセ。まだ、あのレストランには行っとらん。ウチ、もう十八になった。お酒も飲める。まだ飲んでへんけど。あと洋服も少しずつ、買うようになったんや。着物やと不便も多いしなぁ。


 でも、おしゃれなワンピースは、まだや。センセに選んでもらうって決まっとるからな。


 あー早く会いたいわぁ。


 ウチ、大人っぽくなったんや。髪も伸ばしたし、背ぇも伸びたし、体つきも女っぽくなった。


 きっと、びっくりするわ。


 期待しとき。二年も放っといたこと、後悔させたるからな。

 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る