META POEST【旧題最強姉妹の末っ子】
和泉歌夜(いづみ かや)
序章
第1話 最高で最悪の結婚式
あぁ、今日は人生で一番の日だ。
鏡を見ながら私はそう思った。
見てよ、この可愛げなイチゴミルク色の髪を。
今日は白のヴェールを付けているからより一層可愛さが際立っている。
それにこのドレス。
華奢な私にぴったりなサイズ。
デコボコのお姉様達には絶対に綺麗に着こなせないわ。
このウェディングドレスは、私にふさわしい。
メタメターナ国の13人の姉達の中で、私が、メタがあの王子様にふさわしいんだ。
「ありがとう。ピニー」
私はドレスの着替えをしてくれた全自動お手伝いロボットの頭を撫でた。
三角帽子を被った小人達は嬉しそうに跳ねていた。
――トントン
「はー」
「メタちゃああああああん!!!」
私が応じる前にドアを突き破る勢いで開かれたかと思えば、ボサボサのバニラ色のロングヘアをたなびかせながら私に抱きついてきた。
「ろ、ロリンお姉様、ちょっと抱擁がきつ……ドレスが汚れるだろうが!」
実の姉に礼儀正しく応じようと思ったが、相手が相手なので、つい怒って蹴っ飛ばしてしまった。
ロリンは「アピン!」と動物の鳴き声みたいに叫んだが、全く怒った様子はなくむしろ喜んでいた。
「結婚なんてやだよ!
けど、ウェディングドレスめっちゃかわいい!
でも、王子様に取られるなんてやだ!
でも、ウェディングドレスめっちゃかわいい!」
結婚に反対しているのかしてないのかどっちなんだ。
私の晴れ姿で興奮しているのか、鼻血を出しながら今にも抱きついてきそうだったので、ドレスが本当に汚れる前にピニーに命じて追い出してもらった。
「ま、待って! も、もう一回だけ拝ませ……」
ロリンは留まろうとしていたが、ピニー数人に拘束されたら振り払う事もできずに、ズルズルと連れて行かれてしまった。
「全くシスコンは本当に困る」
私は飽きれたように溜め息をつくと、ピニー達と一緒に式場に向かった。
鼻歌を歌いながら式場まで歩いていく。
後ろからピニー達がテクテクと歩きながら私の後を追っていた。
早く彼に会いたい気持ちで一杯だった。
今すぐ駆け出したかったが、ドレスの裾を踏んでせっかくの化粧した顔が台無しになったら最悪なので、はやる気持ちを抑えて歩いた。
そうこうしていると、大扉の前まで来た。
ピニー達が私が来たので、ドアを開けた。
隙間から賛美歌が聞こえてくる。
あぁ、いよいよだ――私は深呼吸して中に入った。
けど、そこには誰もいなかった。
一瞬幻覚を見ているのかなと思って、何度も目を擦った。
やはり、彼の姿は見えなかった。
私はバージンロードを歩いて、神父の前に立った。
神父の格好をしたピニーが不思議そうに首を傾げていた。
チラッと参列者を見た。
誰もいなかった。
まぁ、姉達は結婚に反対していたのは当然として、どうして王子様側の親族や親戚とかいないんだ。
もしかしてはめられた――信じたくもないような現実が襲いかかっていると、バンッと乱暴にドアが開かれた。
ロリンが焦ったような顔をして入ってきた。
「メタちゃん! 大変だよ!」
ロリンはバタバタと私の所に来ると、黒い球体を見せてきた。
「やめて。今はあなたと関わりたくはないの」
「違うよ!」
ロリンは珍しく強く否定すると、球体の出っ張った部分を押した。
すると、球体は勝手にフワフワと浮かぶと、光が現れた。
目の前に突然姉達が現れた。
彼女達の隣にはイケメンの王子様が震えながら立っていた。
「チャーム王子!」
私は彼の元へ駆け寄ろうとしたが、通り抜けてしまった。
「あれ?」
「無駄だよ。それ、ホログラムだもん」
「ホログ……なにそれ」
「立体映像。つまり、幻だよ」
「幻……」
私はうわ言のように呟いた後、ジッと見ていた。
これが幻。
まるで実際にいるかのようだ。
きっと姉達が作ったのだろう。
悔しいけど、さすが世界屈指の技術力を持っている国の血筋だけある。
私は唇を噛んでいると、笑い声が聞こえた。
「ご結婚おめでとう。メタ……と言いたい所だけど、チャーム王子はあなたよりも私達がふさわしいと思うの」
目つきの悪い姉がそう言った。
「これからみんなで仲良く暮らすんだ〜! もちろん、お前ら抜きでね!」
ツインテールの姉があざとい声を出してそう言うと、
皆、私を馬鹿にするような笑った後、プツンと切れてしまった。
「ムキーーー!!!」
私は幻が終わるや否や、その球体を掴むと思いっきり地面に叩きつけた。
激しく壊れる音がして、細かい部品がバラバラになった。
「私の! 幸せを! 邪魔! しやがって! クソ姉ぇえええ!!!!」
私は落ちた奴をグシャグシャ足で踏み潰した。
気づけば、原型を留められなくなるくらい粉砕していた。
「はぁ……はぁ」
怒りがまだ収まらず、鼻息を荒くしながらプリプリしていると、ポンと肩を叩かれた。
ロリンが穏やかな笑みを浮かべていた。
「私と結婚するか?」
この一言が私の怒りの沸点の限界を越えて、ここぞとばかりに思いっきり殴った。
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