第78話 イベント
FUO2はゲーム時代、年に何回か1週間かけてポイントを稼ぎ競うタイプのイベントがあった。個人ランキングとチームランキングがあって、個人ランキングで上位に入る人の多い幼女同盟は面子が少ないのにも関わらずチームランキングでも上位に位置していた。ただ、1位の経験はほぼない。
チーム対抗戦のように直接的な戦闘じゃなく、特定のクエストでシャドウを狩ったり特定のレアドロップを稼いだりゴールドを稼いだり……まあ基本的には同じクエストを延々とクリアするタイプのイベントだ。
この手のイベントがあるからゲーム時代、火力が大正義になったんだよなあ。カチ勢だとどうしても狩る速度が遅れるし、個人ランキングとかはほぼ完全にユリクリウスのサポートに徹していた。
まあそのユリクリウスの殲滅速度がゲーム時代でも異常だったお蔭でおこぼれを貰って2位とか3位はよくあったけど。基本的には1週間、ずっと狩っていたな。特に大学に入ってからは何日も徹夜して上位を狙っていたから、傍から見たらただの頭おかしい人だったと思う。
この手のイベントで、上位に入った時の報酬は多かった。利便性のあるアイテムから、コスチュームの引換券まで色々と手に入る上、シャドウを狩るだけなら無課金でも出来る。……だから報酬目当てで、時間が許す限り走り続けられる人が正義だった。
今回はどうやら毎日のグループ分けもあるタイプのイベントのようで、恐らく15人で一組のグループになる。この小グループ、ゲーム時代の報酬はNPCチケットが多かったけど、ゲーム時代と同じならグループ内1位でNPCウェアコスチュームチケットが3枚、2位から5位で2枚、6位から10位までなら1枚という感じ。
シウラさんの服が確か10枚だったかな。その他、アイドルやってるNPCの服装や受付嬢の服辺りは人気が高かったけどゲームが現実になった今欲しいかと言われると微妙。そもそも結構な数のNPC服は揃えているし、追加されている雰囲気はないから無理に走る必要はない。
一方のチーム報酬はチームルームに飾れるトロフィーと、実用性のあるアイテムやガチャを回すためのジュエル辺りが多かった。今回はチームリーダーが新しい宇宙船の船長になれるという爆弾のような報酬があるから、これが早い段階で公表されるなら鯖によっては戦力を集めるチームとか出てきそう。
黒猫からイベントの告知があった次の日。イベントまではまだ3日あるようなので、今日はユリクリウスのマイルームでイベントに向けての打ち合わせをしながら温泉でのんびりと過ごす。今回のイベントでシャドウの本拠地に向かう面子は自分とユリクリウス、コッペパンとサタンちゃんといういつもの4人パーティー。下手に強い人同士で固まるのも火力過剰になるから、敵をトレインする役や壁役とかは居た方が圧倒的に良いね。
ぶっちゃけサポート役が2人も居ればユリクリウス1人で殲滅は出来る。自分の役割は極力敵からのヘイトを集めてユリクリウスを被弾させないようにするぐらいか。もうレベルが上がったせいで被ダメはほぼ全て1だし、大型のシャドウでも数ダメージ食らう程度だからどんなに油断していても死にはしないんだよな。
「この身体になった以上、1週間戦い続けるのは余裕だけど、元々のゲーム時代の時も1週間走り続けていたのは頭おかしかったよな」
「基本トップランカーは寝ないからな。人がまだ多くいた時は高校生だったし1位を取れたことはなかった」
「それが大学生になった途端、イベント時には毎食カレーを食べる廃人になったのには正直引いた」
「良いだろカレー。美味しいし味変が簡単だし」
このユリクリウス、ゲーム時代にはイベント前日にカレーを仕込み、イベント時には1週間カレーを食べ続けるという頭おかしい生活をしていた。料理時間を短縮するためだそうだけど、これでも食事を全て出前で済ませている人(ライトさん)やカロリーメイトのみで食いつないでいた人(ゼルさん)には効率で負けていたらしい。頭のおかしい人ばっかだ。自分も似たような感じではあったけど、そこまで人間は止めてなかった。
「ボトラーをしていないならまだ常識は保っているとかいう風潮。今回は飯どうするの?」
「戦闘中に食べるか我慢するかの2択。カレー持って行っても良いぞ」
「カレーは自分も好きだけど、1週間21食カレーはやだよ。……ゲーム内アイテム食べる感じで良いか。マグロ煮とかステーキとかあるし」
「火力上がるからそれがベストか。
……いやマグロ煮めっちゃ値上がりしてるなあ」
「ポテトサラダぐらいしか火力アイテムで値段安いのないなこれ……」
簡単に打ち合わせをした後は温泉に入る。コッペパンも連れて来ていたので一緒に温泉に入るが、コッペパンを見ていると船長になれるイベントの存在を知らせた後の、黒猫の話を思い出すな。
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