第46話 タンク役

スーパースターにもヘイト上昇スキルはあるため、交互に赤く光って攻撃を集める。当然だけど、被ダメは1だね。大型ボスだけどこの模倣体のレベルは120だから流石にもうダメージは入らない。眼が赤く光ってビームとかも撃って来るけど、1ダメ×10とか死にようがない。あ、ヤバイ燃焼入った割合ダメいてえ。


[クロワッサン:燃焼ダメで1%72のダメージ入るの辛い]

[黒猫:俺の体力の5%ぐらい持って行ってて草]

[ゼル:射撃職ってレベル上げてもHP1500ライン超えないの?]

[ビートル:火力特化だとギリ1500超えるか超えないかぐらい。スロットに射撃アグレッシブブースター(HP-100、射撃攻撃+150)が入るとまず届かない]

[黒猫:アグレッシブブースター高かったしこの世界だと再入手不可能だから捨てるに捨てきれないの……]

[ユリクリウス:アグレッシブブースター入りの装備はもうそのままにして耐久寄りの装備作りたくなってきた……]

[クロワッサン:お。

カチ勢にようこそ。まずはオールガードステアップⅩから作ろうか]

[ユリクリウス:今からそのレベルを作る気は起きないからオールガードステアップはⅥかⅦぐらいで妥協するわ]


エマージェンシークエスト中なのにチームチャットは活発である。拘束具を撃ち出す間のインターバルが暇という証拠だね。次第に模倣体が苦しみ始めたので、そろそろ拘束できるかなと思ったタイミングで模倣体はメカビートルの最終砲のようなエネルギーを集め始めた。……これ、フィールド全面攻撃だったら流石に死ぬ奴何人か出て来るんじゃないか?オペレーターの人達も慌ててるし、不味そう。


ゲームにはなかった行動、ヤバそうな攻撃を見てジュリエットさんと同時に宇宙船から飛び出すが、ジュリエットさんだと受け切れない可能性があるのでジュリエットさんを宇宙船側に押し返す。この人、128レべってことは黒猫さんと同じく鯖の調整役をしていたってことだろうしレベリングが間に合ってない。


ジュリエットさんも大ボスの攻撃一発で沈むってことはないだろうけど、真っ先にヤバめの攻撃を受けるというカチ勢の本懐を味わうのは自分一人で良いです。ゲームから現実となったお蔭で、技を連続して使用すれば高度上限には引っかからずに無限に上昇し続けることが出来る。よし、このぐらい距離が離れていれば大丈夫だろう。


巨大な黒い塊が、眼前に迫って来るけど凄くワクワクする。ああこれ自分も結局ゲーム感覚抜けきってないな。結局のところ、自分は敵からの大技を受け切って「今何かしたか?」みたいな涼しい顔をしたいだけの人間だ。


衝突する寸前、技のオーバースラッシュを叩きこむと巨大な黒い塊が更に大きくなって自分を呑み込む。おおこれヤバイHPが溶けていく。-107、-100、-110、-101、-108……。


視界が一度真っ暗になった後、視界が開けたらHPは7割弱を示していた。オート回復薬使用が1回起動したから、回復薬で3割は回復しているはず。ということは、今の自分の耐久の6割を一撃で削ったことになるな。ダメージ発生は、40回ぐらいか?これジュリエットさんが飛び出していたら死んでいたかもしれない。


しかし自分が突っ込んだことで、後続への被害は0。今もの凄い充足感を味わえているので鏡で自分の顔を見たら気持ち悪い顔になっているだろう。あ、今の自分の顔めっちゃ可愛い男の娘だからただただドヤ顔が可愛いわ。


[クロワッサン:ダメージ発生40回程度、1回100ダメ~110ダメ]

[ユリクリウス:あれそれヤバくね?船上到達してたら結構な数の犠牲者出てたというか4000ダメはほぼ全員死ぬ]

[黒猫:いやクロワッサンは圧縮されてたのに当たった感じだから実際にはもう少し威力が下がっていたはず。いやでもクロワッサンのダメージカット率で4000ダメか……。

タンクがいて良かった奴だな]

[ゼル:HP1500ラインなら普通に即死があったかもね]

[ABC:本当にクロワッサンが居て良かったね。まあ拘束は終わったし後は艦砲射撃で……あっ]

[ユリクリウス:どした?]

[ABC:これ他鯖どうなったんだろう……?]


拘束が終わり、後は艦砲射撃を眺めるだけになったのでチャットでダメージ量とかを報告していると黒猫とABCが慌てて他の鯖の人と連絡を取るが、3鯖+4鯖、5鯖+6鯖、7鯖+8鯖は自分と同じようなカチ勢が前に出て防いだらしい。そしてそのカチ勢でもオート回復薬を7個8個使用するようなダメージ量だったから、他鯖も他鯖が心配だったらしい。


……そしてあの球が着弾したのは9鯖+10鯖の戦場。10鯖はゲーム最初期から人が少なく、上位層の他鯖への移動が多かったため、カンストが少なかった。9鯖も10鯖ほど人は少なくなかったが、有名なプレイヤーはあまり知らない。


強制徴発が起きなかった11鯖以降のカンスト勢は希望者のみこの9鯖+10鯖の戦場に送られたみたいだけど自主的な参加は少なく、1鯖+2鯖の960人に対して9鯖+10鯖は430人しかいなかったようだ。一応、鯖番号が若い順に高難易度にはなっていたけど、ボスの攻撃力はどこも一緒だったっぽいねこれ。


ただそれでも、タキオン船団の計算上は勝てるはずだったんだろうけど……最後の攻撃に関してはオペレーターの人達も焦っていたし予想にない攻撃だったんだろう。結局、9鯖+10鯖の戦場では着弾した箇所の周囲に居た100人近くが倒れて治療ポット行き。


シャドウの拠点でHPが全損したわけじゃないので、採掘ステーション防衛戦の時のように助かる見込みは若干ある。けどまあ……あの手の攻撃が来たら普通は避けるし今回は緊急離脱のためのポータル持たされていたんだから現場の判断ミスも大きい。


自分はさっきまでの攻撃から100%耐える自信があったから飛び出したけど、他鯖の人はオート回復薬が何回も起動したとか生きた心地しなかったんじゃないかな?……とりあえず自分は、オート回復薬の起動設定を残りHP50%から25%に変えておくか。

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