第41話 第4章

チーム対抗戦に無事勝利した次の日。他チームの対戦カードの観戦にも飽きて来たのでFUO2のストーリーを見直すことにする。一応ある程度は見ていたんだけど、大学受験の勉強であまりイン出来てなかった時期のストーリーである第4章だけはしっかり見てないんだよね。


一応概略だけは把握していて、惑星マレリアという惑星が舞台のストーリーだ。マレリアにはよくあるファンタジー小説で出て来るゴブリンやオークが敵として沢山出て来る。この第4章はFUO2全体のストーリーからは脇道に逸れるような、盲腸のようなストーリーという評価でわりと不評だった。


と言ってもこのストーリーが現実にあったことだと説明されて、マレリアに実際に行く可能性も出て来た以上はストーリーを履修した方が良いだろう。ユリクリウスも第4章だけはスキップしてダイジェスト版で把握していただけらしいし、一緒にちゃんとストーリーを見ることに。


流石に温泉宿でストーリーを眺めるのもアレなので、今回は自分のマイルームに招待してのストーリー鑑賞会だ。


「ピンク塗れの部屋脱却したのか。似合ってたのに。

何というか、普通の部屋だな」

「流石に正面の部屋は応接室みたいな感じにするだろ……。

テレビ置いたのは右奥の部屋な」

「じゃあ左から探索するか。

……うわあ」

「いや前から左はポスター部屋だったのにドン引くな」

「ここまでの密度じゃなかっただろ。幾らするんだよこれ」

「ゲーム時代は1枚200万ゴールドぐらいじゃね?

そっちの部屋は70枚ぐらい飾ってるから1億はある」


ユリクリウスがマイルームの探索を始めるけどゲーム時代はともかく今は生活空間になっているから勘弁して欲しい。いやコッペパンやコロネが掃除してくれているから汚い部屋じゃないけど。


付け加えるなら、別にコレクション部屋は見て貰っても別に構わない。見せびらかすために作ったようなものだからね。でもその奥のプライベート空間にまで入るんじゃない。


「お団子屋台セットって高騰した奴?」

「した奴だな。在庫はあと20個ぐらいある。

1個いるか?」

「ちょっと欲しいな。

あー、ゴールデンユニットバスで良いか?」

「いやあげるつもりだったんだけど……まあそれで良いか。ほぼ等価だし」


ユリクリウスを引っ張り右奥の部屋へ連れて行き、お団子屋台セットの長椅子に座り勝手に出て来る団子を頬張りつつテレビをつける。本来、ストーリーはマイルームの操作を行うパソコンで見れるんだけどテレビで見れるようにしておいた。まあ2人以上で見るならこれが一番だな。


「一応ある程度ストーリー知ってるんだろ?」

「ああ。プロローグのタクト王子の半生だけ見た」

「……実質何も見てないのと同じだし自分と一緒か」


惑星マレリアでは2つの大国が争っていて、片方の国の王子の名前がタクト。こいつがテイマー職の開祖となるのでFUO2的には重要人物となる。


で、プロローグはタクト王子の幼少期が流れるんだけどまあ悲惨。生まれつき病弱で、母親は出産時に死亡。価値観的には中世真っ盛りって感じだから出産時の死亡は珍しくないようで、国王の母、タクト王子から見て祖母が病弱なタクト王子を毎回看病していたらしい。


しかしタクト王子が12歳の時、この世界では不治の病とされるペストっぽい病気に罹患。嘔吐でまともに食事も取れず、どんどん痩せ細るタクト王子。小屋に隔離されたタクト王子を付きっ切りで看病したのは、やはり祖母だった。


そしてタクト王子が生きるか死ぬかの瀬戸際の際、王が戦死してしまう。2つの大国のうち、どちらが勝ちそうかは最早明白だったため、シウラさんは敵国の王を討ち勢いに乗る方の国に声をかけようとして、主人公が待ったをかける。ここまでがプロローグ。


「これ普通にシウラさん酷いよね」

「いやまあラスカン王国とぺルナール王国、どちらが勝って惑星を統一しそうかと言われればどう見てもラスカン王国だし……むしろベルナール王国を推し始めた主人公がおかしい」


次の第4章第1幕では主人公はこのタクト王子がペストに打ち勝ち快気した場合はぺルナール王国の肩を持とうぜと発言するところから始まり、延々とタクト王子が生きるか死ぬかを見守るタキオン船団。


……なおタキオン船団にとってこの程度の病は一瞬で治せるので、『主人公とその組織の長が簡単に救えるはずの人の生き死にでギャンブルをする』いう作中屈指の胸糞ポイントでもある。まあ主人公の描写的に、タクト王子が快気する未来視えてた可能性高いけど。


タクト王子の祖母の決死の看病の末、ついに病を克服したタクト王子は死神に打ち勝った事を国民に告げ、王に即位しぺルナール王国の士気を大いに盛り上げる。そのその直後、タクト王子のおばあちゃんはその病に罹患し帰らぬ人となった。あまりにも残酷過ぎる。


……この第1幕が終わった後、第4章のOPが流れ始めるんだけど「泣くな笑え」というフレーズでタクト王子が王に即位した直後の、おばあちゃん死亡シーンが流れるのでたぶんタキオン船団に人の心はない。立派な父と常に支えてくれた祖母の両方を同時に失った弱冠13歳の王に対し「泣くな笑え」はあまりに酷い。

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