第20話 ケーキ

NPCへの好感度上昇アイテムは幾つかあり、その中でも最大の効果がある『サイゼリカのケーキ』は好感度を1段階上昇させるアイテムとしてゲーム内に存在している。……いやうん、某有名飲食チェーン店とのコラボアイテムのはずだったんだけどな。何でタキオン船団で普通に売っているんだろう。しかも予約が10年待ちとかになっていた。宇宙規模で有名なケーキ屋の看板メニューであるケーキとかちょっと自分で食べてみたい。


「コッペパン、サイゼリカのケーキ食べる?」

「え!?今あるのですか!?」

「うん。倉庫に眠ってた。ほら」

「おお……これがサイゼリカのケーキ……」


倉庫の中を見ると、サイゼリカのケーキの数は47/999個。うーん、あまり貰えるものでもなかったからこの数かぁ。取り出してみると普通に美味しそうなケーキなんだけど、何年前から倉庫にあるものなのかは分からない。


試しにコッペパンと食べてみる流れになったので、フォークであーんして貰う。外観はロリ巨乳に膝枕されながらあーんして貰う男の娘。完全に堕落した上位プレイヤーの末路である。


そして口の中に含まれた瞬間、一瞬で心が幸福感に支配された。これヤバイ薬とか使ってないよな!?甘いとかとろけるとかそういうのではなく、ただひたすらに美味しいって感覚が一口毎に顔面を殴り込んで来るんだけど。


これは攻撃力が上がるのも納得ですわ。効果は5分間だけだけど攻撃力上昇効果は大きいからTA上位勢は集めていたはず。ちょっとユリクリウスに在庫が何個あるのか聞いておこう。


「はい、あーん」

「え!?あ、はい。あー……ん!?!!?」


膝枕されながらコッペパンの口の中にケーキを放り込むと、サポートロイドという機械の身体であるはずなのに目を白黒させて悶えている。これは好感度上がりますわ。また3日後にチョココロネが来たら歓迎会とかやって、そこでこのケーキを出そうと決める。そして何か通知が来たなと思って空中に浮かぶUIを推すと、間違えてそのままOKを推してしまう。あ、これ入室許可だ。


次の瞬間、マイルームに現れるユリクリウス。その姿を見て固まる、コッペパンに膝枕されている自分。うわなにこれめっちゃ恥ずかしいんだけど。しかも現在進行形でサイゼリカのケーキを食べさせ合っているし。


「撮って良いか?撮るぞ?撮った」

「いや撮影許可出してねーよ!どうせお前もサタンちゃんに膝枕とかして貰ってるんだろ!?」

「まだ触れてすらいないわ!決めつけんな!」


そしてすぐさま写真を撮られる。何で撮影モードがUIに残っているんですかねこの世界。しかも変に現実化しているからすぐさま写真をチームチャットに流されるという。コイツ鬼畜か。撮影許可出してなかっただろ。


[ユリクリウス:【クロワッサンがコッペパンに膝枕されている写真】]

[ゼル:うわ。いちゃついてる]

[ハル:これ百合じゃないってマ?]

[ユリクリウス:サポートロイドに膝枕とかこの世界堪能し過ぎでしょ]

[黒猫:やっぱその外見で男は無理だぞ。にしてもサポートロイドといちゃつくとかお前さぁ]

[クロワッサン:白猫ー!チムマスのサポートロイド権限で写真を消してくれー!]

[白猫:【黒猫が白猫に耳掃除されている写真】]

[白猫:【黒猫が白猫のお腹に頬ずりしている写真】]

[白猫:【黒猫が白猫に頭を撫でられてとろけている写真】]

[黒猫:ああああああああああああああああああ!!!オールスクリョデリートォォォォ!]

[クロワッサン:もう遅いわ。ダウンロード完了してる]

[ユリクリウス:この世界来てから百合フォルダの写真がめっちゃ増えた気がする]

[クロワッサン:おい。そのフォルダに自分の写真は入ってないよな?]

[ユリクリウス:薔薇フォルダに入れてやろうか?]

[クロワッサン:え……いや……まあ……うん……]


そして黒猫のサポートロイドの白猫さんがサポートロイドにしては感情豊か過ぎる。まあコッペパンも徐々に口数が増えて来たけど、主人とのコミュニケーションの量が増えると、感情豊かになっていくのだろうか。


ということは、もうちょっとコッペパンと一緒にクエスト行く回数とかも増やした方が良いのかな。主人の戦闘をサポートするのが一番の役割とかいう設定だったはずだし、ゲームの世界だと一緒にクエストを周回するのが何だかんだで好感度上げでは一番だった。


個人的にはもうちょっと感情豊かになって欲しいし。設定で性格を弄るのも、ユリクリウスのサタンちゃんを見ているとそれはそれで何か硬い感じになるからなぁ。……AIだし、自動学習とかもしているのかな?


ユリクリウスとの茶化し合いが終わった後は、ユリクリウスが真面目な表情となる。急にイケメンフェイスで深刻そうな表情になるな。大方要件は想像付いているけど、さっきまでソロでVR空間引き籠っていたから何かあったんだろうな。

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