終わりが始まり
かんきつごんめ
1.終業式
「なぁ、もう別れない?」
こう言うのも無理はない。私達は最近関係が良かったとは言えないし、何なら喧嘩ばかりだった。
「うん、そうしようか」
素っ気無い感じで言ってしまった。
本当は別れたくはないとか今更言えなかった。
「私たち早すぎたかもね」
「しょうがないよ。もうこれ以上この関係ではやっていけないだろうし」
「そっか。じゃあね」
「うん。じゃあね」
私たちはお互いに背を向け別々の方向に去って行った。
必死に堪えていた涙が誰も見ていないからか溢れ出てきた。
確かにあの関係ではやっていくことは難しかっただろう。ただ、それをお互いに乗り越えていくのがカップルというものだと思っていた。
誰も居なくて静かな夜に一人泣いていた。
翌日
あの夜帰ってきてからは食事が喉を通らず、そのまま眠ってしまった。
「どうしたの、体調悪いの?」
リビングに行くと母からそう言われた。
「ううん、なにもないよ」
なにもないわけがないが一旦その場をやり過ごした。
「ご飯はちゃんと食べるのよ」
台所から私の朝ご飯を持ってきながら母は言った。
「そういえばもうすぐクリスマスね。
「うーん多分あるかも。まだわからないけど」
「そうなのね。分かったわ」
このクリスマスも
いつまでもそんなことを思ってちゃ駄目だと思い、一度頭の中から消そうとした。
今日は二学期最後の学校だ。
全校集会をして、掃除をして帰れる。
『全校生徒は体育館に集合すること』
放送がかかると、学年ごとに移動し始めた。
私たちのクラスも体育館に入ると、そこには敏生が居た。
でも今はもう関係ないことだが忘れられない。どうにかしてこちらを見てくれないかと思い少しの間敏生の方を見ていた。
しかし気づいてはくれなかった。
「美咲、意識しすぎだよー」
友達の
由香たちにはまだ昨日の事を話していない。
だからまだ付き合っていると思っている。
「あ、ごめん。バレてたか」
ここで言うのは違うと思い適当に嘘をついた。
恐らく敏生はこちらに気づいたとしても振り向くことはなかっただろう。
ずっと一人でなにやってるんだろうと思っていた。
校長やらの長い話を聞き流しながら、敏生のことをチラ見していたりしていた。
どうせ相手にもしてくれないのにこんなことをするのは辛いと分かっているのに、やってしまう自分が嫌いだ。
全校集会が終わり、各々のクラスで掃除が始まった。
「ねぇ、美咲さん」
先生から呼ばれて思わず「はい?」と返事をした。
「ちょっとゴミ袋を職員室から持ってきてくれない?先生、今ちょっと手が離せないの」
「あ、わかりました」
「ありがとう。お願いしますね」
職員室に入り、ゴミ袋を貰おうとしていた。
すると横から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
横を見てみると、そこには敏生が居た。
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