正義の勇者、カラフルパンツァー ~少女のパンティを被って異世界無双~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第1話

「きゃああっ! だ、誰か! 誰か助けて!!」


 少女が森の中を走っている。

 彼女を追いかけているのは、獰猛なバケモノだ。


「ひっ、ひぃ、あっ!」


 少女が転ぶ。

 逃げる手段はなくなった。

 バケモノが爪を振り上げる。

 彼女は頭を抱えてうずくまるしかできない。

 殺される。

 そう思った直後――


「おい」


 森の中から声がした。

 静かな声だったが、それは少女とバケモノの視線を集めた。


「あ、あなたは……?」


 現れたのは、一人の少年だった。

 どこにでもいそうな普通の少年だ。

 ただ一点、白のブリーフパンツ一丁であるという点を除けば。


「グルルルル……!!」


 バケモノが警戒のうなり声をあげる。

 それを向けられた少年は、それでも平然としていた。


「俺とやる気か?」


 そう言って、右手を前に出す。


「ガアアアッ!!」


 バケモノが少年に飛びかかる。

 鋭い爪が振り下ろされ、少年の頭を引き裂く――

 寸前で、ぴたりと止まった。


「くっくっく。そんな爪じゃ、【ホワイト・パンツァー】の装甲は破れないぞ?」


 少年が笑った。

 バケモノが鋭い爪を再び振り上げる。

 しかし、結果は同じだ。

 爪は再び少年の頭ギリギリで止まった。


「諦めの悪い魔物だぜ。何度やっても結果は同じだ。……とはいえ、【ホワイト・パンツァー】は防御に優れている一方で、攻撃はからっきし。となると……」


 少年が少女に視線を移した。

 彼女は恐怖のあまりに動けなくなっている。


「お前、何色のパンツをはいている?」


「え……?」


「パンティの色だ。赤? 青? それとも黄色か? それ次第で、こいつを簡単に追っ払える」


 少年は少女にそう言った。

 少女は混乱しながらも答える。


「え……あ、その……、水色……」


「水色か。まぁ当たりだな」


 少女が水色のパンツをはいていることがわかった瞬間、少年の雰囲気が変わった。


「運がいいな。ノーパンならマズかったし、白だったら持久戦になるところだった。水色なら……すぐに終わるぜ」


 少年はニヤリ、と笑う。

 そして――


「お前のパンツをよこせ」


「へ? きゃあああっ!!」


 少年は少女のスカートをめくった。

 可愛いパンティが丸見えになる。


「ちょ、ちょっと! なんでめくるんですか!!」


「お前のパンティを手に入れるためだ」


「意味がわかりませんよ! あ、ああ……! いや、ちょっ……!!」


 少年が少女の後ろに回り込む。

 そして後ろから抱きつき、彼女のパンティを素早く剥ぎ取った。


「いいぞ……。素晴らしい水色だ……鮮度も抜群……」


 少年は少女のパンツに頬ずりをした。

 続けて、彼はそのパンツを頭に被る。


「ちょ、な、何してるんですか!!」


「見ろ……。これがパンティ・オブ・パンティ! 【ライトブルー・パンツァー】だ!!」


 彼はバケモノに自分の姿を見せつけた。

 白のブリーフパンツ一丁だったところに、頭部へ水色の女性ものパンティを被った状態である。

 バケモノは言葉もなく立ち尽くしていた。

 それもそのはず。

 人間の謎行動を目の当たりにして、ドン引きしているのだから。


「あの……?」


「……極上だ」


「え?」


「極上のパンティだぞぉぉぉおおおお!! おおぉぉぉぉおおおおお!!!」


「うひぃ!?」


 少女やバケモノを置き去りに、少年は謎の踊りを踊った。

 水色パンティを被っての超高速回転である。


「最高だ! 最高だぞぉおお!!」


「ちょ、ちょっと!! ああ……、そんなぁ……」


 少女は自分のパンティを被って歓喜する少年を見ていることしかできなかった。

 そんな様子を気にもとめず、少年は踊り続ける。

 少女のパンティを被ったまま……。

 そして――そのときは訪れた。


「【コキュートスの息吹】ッ!!」


 一瞬にして、少年はバケモノを氷漬けにした。


「…………え? う、うそ……。あの魔物を一撃で……?」


 少女は目を丸くする。

 そんな少女の前で、少年はバケモノの氷像に近づいた。

 そしてそれに触れると――


「ふん」


「す、すごい……」


 なんと、凍りついたバケモノの氷像は砕け散り、消滅してしまったのである。

 砕けた破片が光の粒子となり消えていくさまは美しい光景であった。

 だがそれ以上に美しく見えたのが、少年の姿である。

 股間部は白のブリーフパンツ。

 頭部は水色の女性ものパンティ。

 明らかに変態の姿なのだが、今の少女にとって彼は英雄だった。


「あ、あのっ!」


「ん? なんだ?」


 少年は少女の呼びかけに応えた。

 パンティを被ったまま。


「た、助けてくれてありがとうございます! あ、あなたはいったい……」


「俺か? 俺はな……」


 少年は少女に向き直る。

 そして――


「俺は……正義の勇者、カラフルパンツァーだ」


 そう名乗ったのだった。

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正義の勇者、カラフルパンツァー ~少女のパンティを被って異世界無双~ 猪木洋平@【コミカライズ連載中】 @inoki-yohei

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