毎月300字小説企画参加作品

やまこし

【第14回】忘れていいよ(テーマ:忘れる)

「エリちゃん、帰ってきたね」

「うん、君は今日も期待してるんだね」

「もちろん。最後にお話ししてから三七六八日経つけど、三七六九日目にまたお話ししてくれるかもしれないでしょ?」


ピョン太は呑気だ。

ぼくは知っている。次にエリちゃんと話せるときは、エリちゃんとお別れする時だ。


「ねえ、ポチ太。エリちゃん、この箱開けようとしてない?」


こんなに近くで声を聴くのは久しぶりだ。ぼくらは、全身の神経を綿に集中させる。


「ママ、この箱だよ」

「本当だ。この子たちとはもうさよならかな?」

「ねえみて!ピョン太!」

「よく覚えてるのね」

「うん、ピョン太のことは、忘れるわけないよ」


ぼくは覚えている。

さよなら、エリちゃんとピョン太。


(オリジナル:2月3日公開)

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