あなたの「好き」が聞きたくて
kao
第1話
「好きです! わたしとと付き合ってください!!」
先輩は無表情でわたしの顔をじっと見て、それから「いいよ」と答えてくれた。
先輩は表情豊かな人ではないからどういう感情なのか分からならいけど、嘘をつく人じゃない。だから『いいよ』って言ったということはわたしと付き合ってもいいと思ったってことだ。
付き合えると思ってなかったから、嬉しかった。だからとても浮かれていたんだと思う。だけどそんな浮かれた気分は最初の一週間だけだった。だって恋人になっても何も変わらなかったから。
先輩の側にいられるだけで満足だった。それなのに恋人になったらそれ以上も欲しくなる。
手だって触れることが出来ていない。側にいられるだけで幸せだけど、さすがに一ヶ月経っても変わらないと不安になってくる。先輩はわたしのこと好きなのかな? って。
それに一度も先輩に"好き"と言われたことがない。告白したときだって先輩は好きだとは言わなかった。
だからわたしは今日も先輩に気持ちを伝える。
「先輩好きです」
「うん」
先輩はわたしの顔を見て、すぐに顔を逸らし頷いた。
「先輩大好きです」
「……うん」
先輩は平然とわたしの言葉を受け止める。わたしの『好き』に『好き』と返してはくれない。両想いのはずなのに、これじゃあ片想いのままみたいだ。
「ってことがあって……ねぇ
「知らないよ」
唯一の親友である彼女に先輩のことを相談したら、興味無さそうな顔でそう言われてしまった。
「頼れる友達が晴香しかいないんだよー!」
「……恋愛したことないからアドバイスは出来ないけど、話だけなら聞いてやる」
あ、口調が弱くなった。なんやかんやで優しいんだよね。
「ありがと〜!!」
「それでどうしたいわけ?」
「先輩に好きって言ってもらいたい!」
「本人に言えばいいじゃん」
「なんて?」
「だから『好き』って言ってほしいって」
「言わせるのは違うじゃん……強制してるみたいでやだ」
「めんどくさっ!」
めんどくさいのは分かってるよ。でもわたしは先輩の本物の『好き』を聞きたいから。先輩がわたしのことを『好き』だと思った時に言って欲しいから。
「あのさ、そもそもあんたの先輩は好きでもない子と付き合うような奴なの?」
「それは…………違うけど……」
「じゃあ心配することないんじゃない?」
「……そうだけど」
晴香の言う通りだ。わたしの心配は杞憂で、先輩はちゃんとわたしを好きでいてくれるはずだ。
だけどわたしの好きと先輩の好きって違うのかもしれないという不安は付きまとったままだった。
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