新型テロリスト・ミラー五郎

狐付き

新型テロリストの色

 テロリストの色を聞かれたら、一般の大衆は黒だと答えるだろう。

 しかしテロリスト本人に問うたら、恐らく白だと答えるだろう。

 大衆からするとテロ行為は危険で恐ろしく、迷惑だからだ。

 しかしテロリストからすると、その行為は自身の正しさを世に伝えるためだからだ。

 とはいえテロ行為自体は正当化できない。何故関係のない人間を巻き込むのか。


 それはさておき、ミラー五郎。この男の場合はきっと自分の行為を色で例えたら黒だと答えるのではないだろうか。

 なにせふざけすぎている。テロ行為に自らの政治的なり宗教的な信念が感じられない。


「でも爆弾とか毒とか使わないところに信念があるんじゃないんですか?」

 警視が問うと、警視正は首を振る。

「それでパンダのキョンシーや野菜サラダの予告状か? 冗談じゃない」

 相手に伝えたいものがぼやけている。そんなものは信念と言えない。


「存在としては透明な感じですけどね」

「不透明な相手ではあるがな」

 なにせその存在を見たものはいない。いや、正確に言うと見たものはいないことになっている。そうでなければ色々と問題があるのだ。


「黒か白かで分けるとするならば……パンダだけに両方とかは?」

「でもあいつパンダ嫌いなんじゃないか?」

 パンダをキョンシーにするような奴だ。きっと好きではないのだろう。


「じゃあ灰色とか?」

「それだとぎりぎり犯罪じゃないみたいだ」

 犠牲者の数は少なくない。真っ黒どころかベンタブラックだ。


「んー、黒と白に固執しすぎてませんか?」

「うむぅ、そうだな。じゃああいつは何色だと思う?」

「そうですね……赤、とか?」

「赤か……血の海とか言わないよな」

「警戒色の赤ですよ」

 警視正はそれが何故かしっくりきた。


「よし、今後奴のことはレッドと呼称するように」

「わかりました。でも警察ってなんでそういうのに呼称をつけたがるんでしょうね」

「昔からのしきたりみたいなものと、傍受されてもわからないようにじゃないか?」

「なるほど」


 そんな話をしていた翌日、真っ赤な予告状が届いた。


 犯人は、警察の中にいる。

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新型テロリスト・ミラー五郎 狐付き @kitsunetsuki

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