2Pカラーのドッペルゲンガー

くらんく

第1話

 はじめて家出をした。

学校にも行きたくないし、家にもいられない。だからいつもの制服を着たまま、乗りなれない綺麗な自転車に乗って、通ったことのない道を進んだ。誰とも会いたくなかった。学校をサボって街中に居れば知り合いは誰もいないんじゃないかと思ってどこかの公園に辿り着いた。


 そして私は目が合った。もうひとりの私と。

真っ新なセーラー服に身を包み、年季の入った自転車の横に佇む私。

私だけど私じゃない。


「ドッペルゲンガーに会うと死んじゃうんだって」


 そんな話を聞いたことがある。

他人の空似とは思えないほどよく似た私たち。

きっとこれがドッペルゲンガーなのだと思った。

どちらが本物でどちらが偽物なのかなんて関係なく、会うと死んでしまうなんて恐れることなく、私は私と話してみたくなった。


 でも、もうひとりの私は私を見てその場を離れようとする。


「待って、もうひとりの私!」


 私は思わず呼び止めた。

もうひとりの私は驚いて振り返る。

その表情も反応も私によく似ていた。


 ふたりでブランコに座って話をした。

私たちは同じ名前、同じ生年月日、同じ両親だった。

不思議な事もあるものだと思ったが、疑ったりはしなかった。

何故ならそんな偶然があってもおかしくない程私たちは似ていたから。


 でも、私たちは全く正反対のところもある。


「アタシ、学校は嫌いだけど友達は好き」

「時々サボってここに来るんだ」

「勉強はほどほどにできるから問題ナシ」


 まるで私が理想としている私だった。


「じゃあアタシそろそろ行くわ」


 私はもっと話したかったけど、もうひとりの私はそうでもないみたい。


「最後にふたつだけ質問」

「なに?」


 私たちは立ち上がる。


「両親とは仲がいい?」

「まあね」


 私は彼女の後ろに立つ。


「人を殺したことはある?」

「そりゃ無いでしょ」


 私は制服のネクタイで彼女を絞め殺す。

そして、真っ赤な制服を脱いで彼女のものと取りかえた。


 家の場所は聞いた。

今日から私が1Pカラーだ。

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