第31話 近代以降(スタア)

 世界で知られた日本発の楽曲と言えば、「坂本九 - 上を向いて歩こう」であろう。あのAviciiが残した作品の中に、この曲をサンプリングしたものがあるくらいである。アメリカ合衆国のBillboard誌で第一位をとったのも有名である。

 しかし、小室哲哉さんが昔言っていたように、日本出自の楽曲で第一位をとったのが、この曲だけというのはどこか寂しい。寂しいという感じは、僕には分かる気がする。まあ、レコード/CDの時代ではなくなったので、同じ意味合いでは、もう永遠に無理だろう。

 第一位をとったから何だ、という人もいるだろうが、そう言えるのは日本国が世界で或る程度以上には認知されているからであろう。

 近代のエリートたちは国家を背負っていた。

 僕の夏目漱石への見方は、江藤淳や吉本隆明のそれにかなり頼っている。漱石が英国留学中に悩んだのは有名であるが、その理由はこう説明される。

 森鴎外らと比べてみればよい。Wikipedia(西暦2024年4月21日10:15)でも触れられているように、鴎外には《ドイツ帝国陸軍の衛生制度を調べるため》というがあった。

 しかし、夏目漱石の場合には、《英語研究ノ為》にに《英語授業法ノ取調》を加えたものが、理由・目的であった(「文部省外国留学生・夏目金之助考――文部省の義務規定への対応と東京帝国大学への奉職を中心に」(平田諭、東京大学文書館紀要 第42号(2024.3)))。

 彼らは国家を背負っていた。その重圧の中で、何をどう研究すればよいのかが分からない。それはそれは、つらかったに違いない。

 話を戻すと、世界で知られることも目標に入れて頑張っている人を、否定できない感じが僕にはする。

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