第4話 かわいいー!

「あ、チューリップ! もってく?」

「んー、植物は直接聞いてみてからね。その赤ちょーだい」


 ガーネットは公園の花壇に降り立つと、赤いチューリップの根元に向かって声をかけました。


「なにやってんのー?」

「チューリップと話してんの、植物は土の中にいる方が本体だから」


 交渉が済んだのか、ガーネットはビンに赤を詰めました。これで大体三分の二くらいといったところでしょうか。


「季節によっては楽なんだけどねー。木々の葉っぱが真っ赤に染まる秋とか」

「モミジ!」

「そーそー、アンタのおててみたいにカワイイ葉っぱが、木一本分真っ赤になるからねー。後はサクラとか、カエデとか……」

「あ、あっちにもあかいマフラーのおねーさんいる!」

「子どもの興味が移るのは早い」


 公園のベンチで誰かを待ってるらしいお姉さんは、真っ赤なマフラーの端っこを持ってため息をつきます。


「これから彼氏とデートなんだけど、ちょっと色が派手だったかしら」

「だいじょーぶ!」


 ガーネットがこっそり後ろから色を採取すると、マフラーは落ち着いた朱色になりました。


「あら……? 気のせいだったかしらね、そんなに悪くもないわ、コレ」

「えへへー」


 朱美ちゃん達は満足してその場を去りました。ビンの液体はあと少しで満タン、というところまで溜まっています。


「あとちょっと……ちょっとが遠いのよねえ」

「おなかすいた! おやつ!」

「はいはい……私にもちょっとわけてね」

「うん!」


 お母さんが持たせてくれた、お花のお弁当箱を開けるとそこには──!


「かわいいー!」

「灯台元暗し」


 可愛いウサギの形に切られた赤いリンゴが、ちいさなお弁当箱いっぱいに詰まっているのでした。

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