第9話 帰納法

桑原と研究者の縁木が電話で会話をする。

「いくら犯罪を犯した同年齢の少女だからって平井澪と一緒に暮らすなんて危険すぎますよ、桑原さん。」

「あれはあの子が自分から名乗り出たんですよ。最初はちゃんとした警備員を雇おうと思ってて、何度も断ったんですが聞かなくて」

「…だからって了承していい頼みじゃないですよ。責任を取ればいいわけじゃないんですよ」

「そうですね…。以後気をつけます」

「はあ……。仮にも犯罪者ですし、平井澪を利用して何かしら企んでいるかもしれないですし」

「そうですね…あ、でも平井さんと仲良くなればこちらも彼女の殺意誘発に使えるかもしれませんよ。目の前で────」

「それはそうかもしれないですけど…私が言いたいのは、もう少し確認をしてほしいということです。確かに平井澪にかんする責任はあなたがかなり請け負っているが全てではないんです。あなたの判断で世界が変わるかもしれないんですよ」

「はい。すいません」

桑原は無能である。


………


地下室の小さなテーブルで、平井と壱ノ瀬は昼食を食べる。


壱ノ瀬は餃子を箸で突き刺し、口に運ぶ。

「餃子、美味しいね。人食った時もこんな食感なのかな」

「そう考えるとあんまり美味しくない…」

「へへへ。確かに。この肉知り合いにもらったんだけどさ。いいとこのらしいよ」

「へー。なんかでも初めて食う感触かも」

「わかる。ちょっと柔らかいよね」


………


………………。


…………。


パンデモニウムパレード

EP9 帰納法


街の端に佇む大きな化け物。名前は筒木緑。彼女は一度人間として生き、次に強烈な思想を持たせた子供2匹を使い人間の事を調べた。


彼女は人間の一つの弱点に気づく。


それは、未知の不安を勝手に法則づけて安心を錯覚すること。そしてその染みついた常識を塗り替えるのにも勇気が必要なこと。


桑原達は化け物が出産する時体が一度しぼみ、次の出産に向けてしぼみを回復させ、回復が完了したら出産をすると考えている。しかしそれは、化け物が作った罠だった。彼女は何の予兆もなしに出産できる。サイズも形も調整できる。筒木緑の謎の『計画』は第二ステップに移行した。


……………。


……………………………………………


生まれる。

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