第4話 道標(みちしるべ)なき旅の始まり
……これから? そんなこと考えた事も無かった。憎い敵を追い、この手に掛ける事を求めて生きてきた自分は…これから何をすればいいのだろうか?
エダは歩みを止め、その場に膝をつく。
「ふふふ」
自らへの問いかけに対し、不意におかしさがこみあげてくる。自分はあの日、あの村で死んだのだ。復讐のために今まで動く死体の様に彷徨っていたにすぎないのに、今更生きる必要などあるだろうか。このままここで命尽き果て、死体を食うという
どうせ帰る場所などどこにもないのだ、生きる必要などありはしない。
そんなことを思っていた矢先、がちゃがちゃと固い金属がぶつかり合う音がいくつも聞こえだす。続いて近づいてくるいくつもの足音。
そこでエダはゆっくりと振り向く。
彼が目にしたのは槍を手にした無数の兵士たちの姿。その兵士たちが身にまとう防具にはブルと同じ意匠。それはつまり、エダの敵であるオヴェ・スタフィ王国の兵士たち。
敵である帝国兵士のいでたちをしたエダを遠巻きにして様子をうかがっている。
と、その中から馬に乗った、指揮官と思しき人物が進み出る。
「貴公、そのいでたちからして帝国に雇われた傭兵であろう。武器も持たず、ここで何をしている?」
馬上の男は馬から降りる事も無く、そう問いかける。それを聞いたエダは何も持たない自らの両手を眺め、
「終わった。全ては終わった。もう俺には何もない」
その独り言の様な返答に馬上の男は嘆息を漏らすが、
「なるほど。では質問を変えよう。貴公、名は?」
「エダ。エダ・イスパー」
ぶしつけな問いにも関わらず表情一つ変えずにエダがそう告げると、周りの兵士たちがざわつきだす。
「……エダ・イスパー……」
「し、死神、エダ!」
無数の槍とともに敵意のこもったまなざしが一斉にエダに突き付けられる。
だが、敵意がこもった無数の穂先を突きつけられても、なおエダの心は揺らがなかった。
この兵士たちの中には自分に仲間を殺されたものがいるのだろう。だとしたら、ここで彼らの手にかかるのも一興。
エダがそう思ったとき。
「まあ、待て。
もはや戦の勝敗は決した。もはや貴公がここにいても何もならぬ、立ち去るがいい」
先ほどの馬上の指揮官がそう言い放つ。と、その言葉に兵士たちがざわつきだす。
「ガシオン様!」
「……皆の気持ちも分かる。だが、もう過ぎたことだ。それに死神と言われるほどの剣士なら、討ち取るには相当の犠牲が出るだろう。これ以上無用な血を流す必要はない」
その言葉に兵士たちの間に戸惑いが広がり、手にしていた槍の切っ先が下を向く。そんな中……
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