第2話 ステーキのお供はやっぱり加藤!

「ああ~、今日も疲れたわ~。やっぱり仕事の後の仕事は疲れるわね」


 うちのとある商社ではいつも人員不足だ。人を雇えばいいと思うだろうが、中々応募者も来ない。


「ま、あの給料で色々言われるんじゃね…。契約社員とパートさんの求められるものが変わらないぐらいだし!」


 という訳で、私もたまに仕事を抜け出しては現場に手伝いに行くのだ。


「といっても、私はリフト免許もないし、仕分けぐらいだけどね」


 課長みたいにパレットを運ぶなんてことはしない。まあ、あなたは仕事を運んでくださいよといいたいのだけど。


「次は子舞~」


「あっ、もうここまで来たんだ。あと数駅でうちに着くわね。今日は食材を買わないと!」


 電車が最寄り駅に着くとそのまま駅前のスーパーに入る。


『いらっしゃいませ~』


「今日はちょっと疲れたし、エネルギー補給も兼ねてちょっとお高めのところで買おう」


 ただし、本当に普通のお菓子も高いので買うのは食材のみだが。


「ここは魚とか肉がかなり割り引かれるのよね~。おっ、あった!」


 私が見つけたのはステーキ三枚セットだ。外国産ながら通常価格は1,400円。40%オフになってかなりお買い得だった。


「くぅ~、これにしましょう!あとは…」


 もうこれだけでいいような気もするけど、ちょっとアクセントに野菜を見る。


「うん!無駄使いはいけないから一応あったと思うけど、食追及ジパングのステーキソースも買っとこう。これ、安いのに美味しいのよね。それに、ペットボトルだから捨てやすいし」


 残念ながら一人暮らしになるとビンや缶はほとんど消費しない。そのため、必然的にビン製品を避けるようになるのだ。特にこういうソースやたれ類はビンものが多いので助かる。


「さて、レジを済ませて帰宅ね!」



「ありがとうございました~」


 無事に会計も済ませ部屋に戻る。


「ただいま~っと。今日も返事はなし!さっさと着替えて料理開始ね」


 いつものように部屋着に着替えると、前回の反省を生かしてケトルのスイッチを先に入れる。


「それじゃあ、ここに取り出したるは北部鉄器!ちょっと高さは低いけど値段もお手頃でステーキ一枚焼けるし、場所も取らないのはいいわよね。それじゃあ、牛脂を…あれ?」


 しまった。牛脂をもらい忘れた…。


「でも、こんなこともあろうかと前回のものが…あった!」


 冷蔵庫をガサゴソと漁ると牛脂を発見したので、鉄の器に入れてガスを付ける。


 パチパチ


「あれ?乾燥が足りなかったかな?まあいっか、溶けてきたしそろそろ肉を投入!」


 じゅ~


「ん~、いい音だ~!これでまた頑張れる気がする。おっと、お風呂を張らなきゃ」


 片面に火が通る前に軽くふたをして、おふろの湯を入れに行く。


「よしっ!まだ焦げてないよね。一度、裏返してと…おっ!いい色してるね、君」


 先に強火で焼いた片面はいい色になっている。後は少し火を弱めてまた軽くふたをして待つだけだ。


「おっと、ここで一緒にこれを投入しないとね」


 ジャーー


 トントントン


 軽く水洗いしたそれを大きめに切ると、鉄器に投入する。


 パチパチ


「わっ!?油がはねた!早くふたをしないと…」


 熱いのは勿論だけど、飛ぶと後が大変だしね。


「後はご飯だよね。ここは定番の山王イリスを使いたいところだけど、せっかくのステーキだし…」


 私はごそごそと保管しているご飯を取り出した。


「この手軽さがレンジご飯のいいところよね。という訳で今日のステーキのお供はこれ!『加藤のご飯 銀シャリ』!これがまたほんのり甘みもあっておいしいのよね~。値段だけ無視したら流石だわ」


 パックご飯の走りにして、頂点って感じがある。まあ、値段もいつも食べているものより一段上だけどね。


「その差額の分、本当においしいのがいいのよね。ご飯本来の味!とかだけじゃなく、こういうステーキとかにも抜群に合うし!」


 お漬物とかあっさりしたものだけでなく、牛丼やカレーももちろん、こういう重たいものにも合うのが王者の風格だろう。


「本当にこれが常用出来たらなぁ~」


 などとつぶやきながらレンジの時間を設定する。


「私はやわらかめが好きだから、いつものように2分30秒と…」


 そして、レンジと火をかけている間に、早朝味噌汁をお椀に開ける。これもロングセラーのレトルト味噌汁だ。


「そろそろステーキもいい感じよね。では、お楽しみのじゅ~じゅ~タイム!」


 私は肉に当たるようにステーキソースをかけていく。それが肉から鉄に移った瞬間にじゅ~という音とともにいい香りがするのだ。


「後は一緒に入れてる白ネギがこのソースを吸って美味しいのよね」


 そう、私が一緒に入れたのは白ネギだった。そのまま焼いて食べてもおいしいけど、こうするとねぎまのたれのような味わいを同時に楽しめるのだ。


 チーン


「ごはんもできたわね。こっちはそのままでいいからお盆に乗せてと。お椀も載せて後は…」


 北部鉄器は付属していた焼き板にミトンを使って載せてさらにお盆に乗せる。お盆もこれを考えて木のものをホームセンターで買って来た。


「よ~し!後はお湯をお椀に入れてティーバックのほうじ茶も作ってと…いただきま~す!!」


 ぱくっ


「ん~~~~、美味しい!ご飯もステーキもおいしい!後はこのねぎを…」


 私は十分にソースがしみ込んだネギも口にする。


「熱っ!でも、おいしい~。はぁ~、今日はしんどいと思ったけど、幸せ~。ずずっ」


 幸せをかみしめるように早朝味噌汁も飲む。



「ふぅ~、ごちそうさまでした。さっ、鉄器はすぐに洗わないとだめになるから、キッチンに持って行ってと…」


 こうして食べ終わった私は先に鉄器を洗い、火にかけて水分を飛ばすと、部屋に戻った。


『お風呂が沸きました!』


「あっ、ちょうどお風呂も沸いたみたいね。それじゃあ、いってきま~す!」


 返事のない部屋で私は着替えを用意してお風呂に入る。



「今日はちょっと豪華にステーキ!こんな日のご飯はやっぱり加藤のご飯!」


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