4月1日
すみはし
4月1日
「もうすぐ4月ですね」
高田さんはそう言って3杯目のハイボールを流し込んだ。
その顔はどことなく憂鬱そうで、春を迎える顔では無さそうだ。
「毎年ね、4月1日になると荷物が届くんですよ」
「荷物ですか」
「別に、先日拝見した“福山さんの話”みたいに明らかに怖いものでは無いんですが…」
福山さんというのは、私が先日話を伺った人物である。
高田さんは彼のことを聞いて、私に連絡してくれたようだ。
「最初は飼っているトイプードルくらいの重さのものだったんですけど」
高田さんはそう言いながら可愛らしいトイプードルの写真を見せてくれた。
「次の年は大体お米ぐらいの重さで、その次の年はそこから2キロ増えたくらいで、その次は…」
「ちょっと待ってください、その重さの“何”が届いてるんですか」
淡々と重さの説明を続ける高田さんにストップをかける。
話がまるで読めない。
高田さんは「肌色のものです」とだけ答えた。
「肌色のもの…?」
「そうです、肌色の、特に何でもないただの塊です」
高田さん曰く、毎年4月1日に“肌色のもの”が届くのだという。
それは毎年重さを変えて送られてくる。
「なにか心当たりとかは無いんですか?」
「相手はわかってるんですよ、匿名配送とかじゃないんで。それが、元カノで」
「元カノさん…?」
「はい、別れてだいたい1年経たないくらいからそれは送られてきました。そこから毎年」
だんだんため息が深くなる高田さんを眺めながら謎の配達物について考える。
飼っているトイプードルは3キロほどらしく、3キロ、10キロ、12キロ……と不規則に増えていく……
「あの、もしかしてそれ、12キロの次って14、5
キロとかじゃないですか」
「あぁ、そうですね」
高田さんはあっさりそれを認めた。
ということは、とひとつの考えが頭を巡る。
その前に高田さんが口を開いた。
「子供の、体重の推移ですよね」
そう、産まれたての子供は3キロほどが平均、そこから年数を追うごとに体重は増えていく。
1歳、2歳、10キロ、12キロ…子供の平均体重はこの程度であることを察する。
「そうなんですよ、そうすると、そろそろ小学生になるんですよね」
高田さんは苦笑した。
「エイプリルフールだといいんですけどね」
4月1日 すみはし @sumikko0020
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