第5話:裏庭弁当もぐもぐタイム

「起立、礼、着席」


 HRが始まると、隣で金髪が揺れる。


 オフ会のあと、始発まで俺と未知留はゲームを楽しんだ。

 幸い翌日が休日だったので良かったが、帰ったら爆睡した。


 異世界みたいな居酒屋。

 シズク団長。

 相沢がミチルだったこと。

 タワマン、コンシェルさん、お泊り会、ゲーム。


 盛りだくさんのイベントを終えた翌々日、いつもの日常が始まった。

 だが一つ大きく変わったことは――。


「相沢、今日は来てるのか。偉いぞ」


 相沢未知留ことミチルが遅刻していないことだ。

 昨晩も一緒にゲームしていたが、俺が寝る時間にちゃんとログアウトしていた。


 こういう素直な所が、彼女の良さだと思う。


 未知留はクラスメイトで浮いている。今はそれが悔しくてたまらない。


 周りにはもっとわかってほしい。

 彼女が、金髪のヤンキーじゃないってことを。


 ……まあ、見た目はそうだが。


 体育の授業、バレーをしていた未知留は、金髪を揺らしながらとんでもないスパイクを決めていた。

 彼女がねたまれる理由は成績だけじゃない。


 成績に加えて、スポーツも万能だからだ。

 入学初期はスポーツ部からの誘いが凄かった。

 

 俺も隣で見ていたし、どこに所属するのか気になっていたが、結局は帰宅部。

 

 もったいない、気取ってる、コソコソ勉強してるんじゃない? といった悪評もあったが、今思えばゲームをしたかったのだろう。


「藤崎、俺もわかるぞ。いいよな相沢さん」

「……何の話だ、御船」


 俺に話かけてきたのは、黒髪マッシュのイケメン、御船みふね晩夏ばんか

 サッカー部の陽キャで、中学は違うが、入学式で突然話しかけられ、仲良くなった。


 ゲームは普段してなかったが、俺がノブレスを進めたところ、部活の合間に楽しんでるらしい。

 ギルドは違うので毎日遊ぶわけでもないが、楽しんでいるみたいだ。


 見た目と明るい性格でモテる。とにかくモテる。だが誰とも付き合っていない。

 一度訪ねてみたが「俺は好きな人にモテたいんだ」という意外にも硬派な答えが返ってきた。


「相沢未知留、今どきめずらしいヤンキーだけど可愛いよな」

「……あのなあ、相沢は――」

「でも、最近は遅刻もしないし偉いよな。俺、彼女が飯を食ってる姿好きなんだよな。すげえ綺麗じゃね?」


 ……こいつ、ちゃんと見てるな。

 御船は前からいい奴だと思っていたが、やっぱりそういうのには理由があるのか。

 他人の良いところを見ることができる。それが、御船の特技だ。


「ま……そうだな」


 俺は彼女のタワマンもコンシェルさんも知っているが、と謎の張り合いを心の中でしながら、言葉には出さなかった。


 そのとき、チラリと相沢がこっちを見た。

 それに気づいた御船が、手を振る。


「相沢さん、今日も金髪可愛いね!」


 こいつの好きな人って、まさか……いや、違うか。



 昼休み、いつもパンを教室で食うか、食堂で御船と飯を食うのだが、今日は断った。


 チャイムが鳴り響き、隣の金髪が立ち上がったのを見て、そわそわした。


 周りにバレないようにつていくと、そこは裏庭だ。

 あらかじめ待っていてくれた未知留が「ここでいいよね? クラスで食べるのもあれだし」と言った。


 昨日の折る、俺は未知留のクエストを手伝っていた。

 そのとき、ゲーム内で食事をしていた話の流れから、いつもの弁当のことになった。


 美味しそうといったら、じゃあ明日、作ってあげようか? となったのだ。

 ゲーム内では「マジ? やったー」と返したが、実際に未知留の姿を見ると緊張してきた。


 俺は、とんでもないことを言ってしまったと。


「どうしたの? 突っ立って」

「あ、いや、何もない。てか、悪いな」

「……何が?」

「いや、手間だっただろう」

「そんなことないよ。一人分も二人分もたいしてかわんないし。ほら、座って」


 俺に気を遣わせない為か、未知留はあっさりと答えた。

 隣に座りながらそわそわしていると、弁当を手渡される。


 クマさんの包みには触れないで中を開けると、想像以上に彩鮮やかな弁当がそこにあった。

 たとえるなら宝石箱、だがこれはチープになるので言わない。


「すっげえ、美味そう……ありがとうな、未知留」


 横に視線を向けると、耳まで真っ赤にした未知留がいた。

 ……そういえばもうすぐ夏か。

 暑いもんな。


「……味は保証しないけど」

「いや、これは絶対美味いだろ」

「さあね。はい、お茶」

「ありがとう。じゃあ、さっそくいただきます!」

「はいはい」


 食べるのも申し訳なくなる綺麗な卵焼きを箸でつまんで頬張ると、ダシの効いた味が口いっぱいに広がった。

 ……美味しすぎる。

 続けて俺の好物に視線が向く。アスパラの肉巻きだ。


 ほどよい塩加減の肉のうまみ、アスパラも下茹でしているみたいだ。

 そのままご飯をかきこむと、思わず笑顔になった。


「めちゃくちゃうまいよ。いや、マジで」


 ふたたび視線をめると、未知留は、お茶を足にはさんでいた。


「……そう、良かった」


 やっぱり耳が赤い。

 

 今日の気温、何度だっけか。

 


 ――――――――――――――――――――――

 あとがき。

 裏庭弁当、もぐもぐ(/・ω・)/



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