4話 双子ー3

カラカラ

馬車が向かうは隣国亜人界「アルデダラス」

ギルド長の紹介状を手にいるはずのない父母を助けに亜人種の騎士団と会うことに

変にこじらないか不安を胸に初めての旅に赴く……

「なぁ亜人界ってどんなところなんだろうな!」

「イーストンさんが言うには亜人界には人種界にはない建物がいっぱいあるってよ!」

「うぅ……少し緊張してきた」

馬車内で喋る3人と共に

「3人とも…良かったのか来てもらって」

「この先何が起こるかわからないんだぞ?」

パシ

軽快に俺の肩を叩くルイ

「昨日も言ったろ、気にすんなって俺らは俺らの意思で来てんだからよ」

「そっか…ごめん」

「謝らないでユジィくん、本当に来たいと思って来てるから!」

「あぁ…うん」

天気は快晴

草原の中をゆっくりと走る馬車

「なぁユジィ」

ギルド長に渡された地図を見るルイ

「君もご両親と同じで魔法域は高いのか?」

魔法域は魔法の威力を10段階に分けた呼称、この呼称は世界創成期に賢者デスタが作ったらしい


(魔法域)

神域ー冥域ー天域ー獄域ー解域ー 空域ー錬域ー高域ー中域ー低域


あまねく種族はこの魔法域の鍛錬で力をつける

解域と空域の境目が強者と弱者の境目らしく終末点の皆様は天域てんいきを使い、人種の最高域は錬域れんいき

魔法域だけを見ても差が顕著に現れてる…どうりで人間が弄ばれるわけだ

「大丈夫かユジィ?」

「あぁ…ごめん」

どう言おうか……

「俺は別に高くないよ、使えても低域魔法かな」

ぽん

肩にルイの手が置かれる

「そう自分を卑下するな」

「その年で低域魔法を使えるだけでもすごいよ」

「人種で魔法が使えること自体がレアケースなんだから」

目を曇らせるルイ

「俺らなんてマルラ以外魔法使えないし…そもそもギルドの奴らだって魔法よりも武器で魔獣狩りしてるやつの方が多い」

「聞く話によると他種は中域魔法使えないやつは差別されてるらしい…俺らは人種はなんでこうなっちまったんだろうな」

……

「悪い…余計な話だったな」

・・・

馬車内に流れる不穏な空気

背中で見えないが手綱を握るピットも寝たふりをしてるマルラもルイと同じ思いなのだろう

人種が他種と比べてとびきり魔法域が低い理由は知っている

だけどこいつらの前で言うのはやめておこう、あまりにも非情がすぎる

「大丈夫だよルイ」

「え…」

「きっと俺の仲間が住みやすい世界を作ってくれるさ」

「もちろん父さんも母さんもだ」

ふっ

「あぁ…その言葉だけでも行く価値はある」

「お前は俺が死んでも守るから安心してくれユジィ」

「ありがとうルイ」

「だけど命はかけなくていい、ただ守ってくれるだけで嬉しいよ」

「あぁ…」

ピコン

次元生命維持率:74.8


「見えてきたぞ」

城塞国家「レオタレス」を出立し数時間

草原を越えると見えてくる巨大な国家を囲う城壁と…

「あれ…浮いてるのか」

見上げる空には浮かぶ何か

3人が口をあんぐりと開けそれを見上げる

「あれが話に聞く…魔法艇まほうていか」


魔法を宿す石「魔法石」を唯一加工・製造ができる種族「亜人種」

そんな強大な力を保有する種が住む亜人界「アルデダラス」

馬車はアルデダラスへと向かう

「おい…このまま進んで大丈夫なのかよ」

不安そうに手綱を握るピット

てかこいつ…

「お前ガタイの割に小心者だな」

「な!」

ぷっ

後ろの2人が吹き出す

驚くピットを追撃

「そんな小心者の武闘家見たことないぞピット」

「バカ言うな!全然ビビってねぇし!」

「震えてるぞ握り手」

「は!?これはこれからの冒険に興奮してんだよ!」

典型的な小心者の言い訳だな

「ま、そう言うことにしておく」

「なんでガキのお前が大人ぶってんだよユジィ!!」

ふっ

「俺は大人だからな」

「ムキーー!!」

「まぁまぁその辺に」

間に割り込むルイ

「それに亜人界に入る前に言われてたろ」

バサ

バッグから薄茶のローブを取り出す

「これをかぶって人種ってことを隠して亜人騎士団に面会する」

「そこでイーストンギルド長の紹介で亜人騎士の団長であるオスカー・ザイザックに助力を願う」

「間違っても観光とかはするなよ」

ふふふ

笑うマルラ

「魔法に目を奪われて目的を見失うなんてやめてよみんな?」

がた

馬車がアルデダラスから少し離れたところで止まる

「ここからは徒歩だお前らこれをき…」

「じゃ行こっか」

ガタ

トコトコ

颯爽と馬車を降り歩を進めるマルラ

くる

「どうしたのみんな、早く行こうよ!」

目を輝かせ口角が上がる女

ガタ

トコトコ

ルイがおもむろに馬車を降りマルラの元へ…

ドン!!

「いたぁ!!」

ルイのチョップ

「さっきの忠告もう忘れたのか!!??」

「うぅ〜」

頭を抑えるマルラ

「なぁピット」

「なんだ」

「マルラって……PONなのか?」

……

「なんだポンって」

あ、やべ

「あぁいや…その…天然なのか?」

はは

「そうだ、あいつはこと魔法に関すると急激にどじをかます」

「あいつの魔法に対する熱意は異常だよ」

「異常?」

「あぁ、俺たちがパーティを組む時お互いの夢を話し合ったんだがあいつの夢は」

「世界を渡って他種が使う魔法を記録する事」なんだとよ」

そうだったのか…

「俺にはさっぱり意味がわからん」

「わからないのか?」

「なんで自分から地獄に行かなきゃいけねぇんだよ」

「他種界に行ったら記録する前に殺されるに決まってんだろ」

「ピット…君の夢も聞いていいか」

「俺の?…まぁいいけど」

・・・

「引くなよ?」

「うん」

バサ

ローブに手を通すピット

「俺は魚人種を絶滅させる」

魚人……種?

「俺の故郷は人種唯一の海に面した街でな、そこは魚人種の奴らにも協定を結んで海の恩恵をもらってた」

「だが奴らはその協定を破って港にいた人種を手当たり次第に拉致したんだ」

拉致…

「その後抗議したけどあいつらは終末点「海王レギュルス」の独断行動だから責任は取れないって抜かしやがった」

「俺はあの時港に来る海帝騎士の姿も見た…でも俺たちの王は仕方なしと不問にしやがった」

グッ

「だから俺が魚人を…この手で殺してやる」

「てな」

「なぁピット」

「そんなに魚人を殺したいのか?」

・・・

ボフ

頭上にピットの手

「そんな顔すんなユジィ」

ニコ

「いずれの話さ、今はお前の父ちゃんと母ちゃんを探すのが目的だぜ!」

笑顔の中に寂しげな表情

「さっきも言ったけど」

「世界の汚点は俺の仲間が殺してくれるよ」

「終末点だって敵じゃないくらいに強い味方がね」

ふっ

「いい夢だなユジィ」

………

「そんな夢物語があればどれだけ幸せなんだろうな」

「夢物語なんかじゃないよピット」

「え……」

バサ

「いずれの話さ」

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