3話 双子ー2

バタン

ギルドの個室

「悪いな強引に引っ張っちまって」

「いや…大丈夫」

「でだ」

先程までの声色とは変わり真剣味が増すルイ

「アスクリードに行きたいんだって?」

「うん」

「……はぁ」

ルイは頭を抱えため息を吐く

「なぁユジィ」

「お前も聞いたことあるだろ「領域国家」」

・領域国家

終末点の幹部が統治する国家

現在、全ての外交ではその領域国家といかにうまく付き合うかが重視されている

5体いる終末点同士は互いに牽制し合っており他国はどの終末点と外交を持つかが生死を分けるとか

この世界を知れば知るだけなんちゅう世界の神にしてくれたんだと叫びたくなる

「アスクリードは終末点「獣王ガリアス」の息がかかってる領域国家なんだぞ」

「獣王は人種との国交を断絶してる…下手に俺らが領土に踏み込んだら……」

「俺らだけじゃなく人種が餌になるんだぞ」

「わかってるのかユジィ」

酷い剣幕で話をするルイ

わかっているから聞いたのだが…

どうしたものか、俺の英雄レーダーではそのアスクリードの王城地下からビンビンに感じ取っている

まぁ最悪単独で行ってもいいけど…

「なんで行きたいんだユジィ」

………

「家族が…」

「家族がアスクリードにいるかも知れないんです」

「それを…助けたくて」

ポロ

……

涙を見て黙る3人

「ユジィ君…」

マルラも何故か泣き始めてしまった、迫真の演技も罪なものだ

「あの草原にいたのは…それが関係するのか?」

む……どうしよう

「そ…そうだよ、俺も捕まりそうだったけど父さんの魔法で逃げてたんだ」

「な!」

急に大声を出すな驚くだろ

「君のお父様は獣人族の目を掻い潜って魔法を使ったのか?」

「まぁはい」

何か考えるルイ

「それは‥相当な魔導士だったのだろう…」

「いやだから狙われたというわけか」

「は!」

だから大声を出すな

「そうか…あの遠方からの巨大な魔法は」

「君のお母様の魔法か!!??」

違う

「そうか!」

壁に持たれていたピットが騒ぎ出す

「だからユジィも俺らも無傷だったわけか」

「どうりで効果範囲の割に俺らだけ傷がないわけだ…親子の絆ってやつか」

違う

「でもアスクリードにいる人種って…」

「全員奴隷になるんだよね」

………………

マルラの言う通り、どうやら獣人種は人種を嫌っているらしく皆一様に奴隷にするらしい

その上探している英雄候補は人種……つまり奴隷の中にいる

面白半分に殺される前に保護したい気持ちが高まるが

「ありがとう3人とも」

「考えるのは明日にしよう、仮に奴隷になったとしても今日明日に殺すほど獣人族も馬鹿じゃないと思うし」

「今日思いつかなくても明日思いつくかもだし」

「ね?」

……

「まぁ、ユジィが言うなら」

「寝るか」

各々装備を外し

「じゃ浴場に行って寝るか」

小さいカバンを持った3人

人種に頼れないなら今晩にでもアスクリードに忍び込んで…大騒ぎして獣人種よりも強い種族になすりつけてとんずらしようか…でも変に目立って一気に人口が減るの怖いし

神通力に「変装」とか「不可視化」があれば話は早いけどなぁ……それに俺の外見めっちゃ人種だし…

うむ、どうしたものか

「ユジィ!」

扉の前で振り返るルイ

「浴場行こうぜ」

「え……」

「俺お金持ってないよ?」

ふっ

「そんなの払ってやるよ…まさか出て行こうとしたのか?」

「今晩泊まってけよ、もちろん金はいらねぇからよ」

「でも…」

今晩にはアスクリードに行きたい…

何か言い訳を……

部屋にはベッドが3つ

「ベッド3つしかないじゃん、流石に木板で寝れないよ」

ぽん

肩にはピットの手

「わかってるぞ、俺らに迷惑かけたくないから出て行こうとしてるんだろ?」

「心配すんなよ、この中に困ってる奴を見過ごすほどバカはいねぇ」

「だよな?」

「もちろん」「当たり前だ」

「な?」

う…断りづらい

マルラが微笑む

「それにルイとピットは大きさ的に無理かもだけど」

「私となら一緒に寝ても平気だよね?」

「それでも嫌かな?」

「泊まらせて頂きます」

まぁ未来の英雄だし今日明日では死なないでしょ、それにアスクリードの気配が薄いし大丈夫大丈夫

その後浴場で体をピカピカにしベッドにダイブ

…………

神になり睡眠が不要となった今、日が上がるまで瞬きせず目を開けることができる

だがここで直に触れるのは邪道、それはマルラの温情を無下にする事と同意

それは避ける

「スゥー、んん……」

女子おなごの直寝息がこれほどまでに破壊力があるとは知らなかった

神様に言われた俺の願いが「美女とS○X」と言われた時は心外極まりないと思ったが

今やってる事を俯瞰してみるとやはり神様は神様だと言わざるおえない

「…………」

人生の遺恨を神様が消してくれたおかげで俺はこうして神生を謳歌できている

ただ一つ、一つ思うことは京介の更生は俺がやってあげるべきだった

まぁあいつが生きてくれてたのならそれ以上の事はないな

「ユジィくん?」

ヒィ!

寝起きの囁きは今の俺には受け止めきれない

「寝れた?」

目を擦るマルラは平時よりも色っぽい

「えぇ…ぼちぼち」

「そっか」

ぎゅ

!!

なんだ……この柔らかさは!!??

「大丈夫だよ…きっとお母さんもお父さんも平気だよ」

「……うん、ありがとう」

急な罪悪感

別に悪気はない…それに奴隷で捕まっている人を助けたいと言うのは事実

だけど、やっぱりここまで心配させてしまった事は申し訳ないと思う


ガシャもぐ

朝食を済ませ我々3人と1柱はギルド長に謁見

「なるほど…獣人種を欺く魔法使いか」

目の前のソファに座る大男はギルド長イーストン

「我々としてもそのような逸材を見殺しにしたくわないが」

「相手が悪すぎる、領域国家の領主は獣王が最も信頼を置く幹部「ジェルミ」

「あいつは人種根絶を謳っている…変に手を出せば難癖をつけ絶滅とまではいかないが半数以上が殺される」

やはり無理か…仕方がない俺が単独で行くか

英雄達には……まぁ神から使命を授かったとか誤魔化すか、そのくらいならセーフだよね?

ならさっさとおいとまを頂いて…

「ありがとうございます」

「では…」

「待ちたまえ」

ギルド長の停止命令

「私のツテに亜人種の騎士団がいる」

「そいつに頼めば亜人種サイドから有益な人材の交易として君の両親を助け出せるかもしれん」

む…嬉しいがややこしいことになりそう

「そこまでしていただかな…」

「本当ですか!!」

なぜか俺よりも喜ぶ3人

「はは!よかったなユジィ!!」

ほんといい奴らだなお前達

「よかったね……ユジィくん」

「これでお父さんお母さんとも会えるよ…」

胸が痛い

「どうだユジィ」

「ギルド長として私も全力で応援するよ」

う……

「お願いします」

パン!

「よしきた!」

「ではすぐに亜人界「アルデダラス」に向かうとしよう!」

………

どうしよう

恐らく俺が探している未来の英雄は子供です

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