鳴き声

 今は神社が好きだが、十年くらい前の私はほとんど神社に興味がなかった。

いわゆる氏神神社にも、ほとんど足を運ばなかった。地元の神社なのにあまり行きたいと思わなかったし、雰囲気も薄暗い感じがして怖かったからだ。

 今はそのときと宮司が変わって、境内もちゃんと整えられている感じだし、あのときと比べると雰囲気も明るくなった印象はある。

 ただ、何年か前ここの境内を散歩していたら、血のようなにおいがしたのが非常に気になった。


 それで、神社巡りをするのだが自転車で行ける場所なら行くし、京都の伏見稲荷大社や三重の伊勢神宮などは電車で行く。

最近だと、京都の縁切り神社で有名な安井金比羅宮にも行った。そのときの話はまた別に書けたらと思う。


 ある神社の話。

 十年以上前、私はある職場で働いていた。自転車に乗って職場へ行っていたが、その途中にその神社はあった。

当時の私は、神社の存在すら認知してなかったし、興味もないので自転車で前を通るだけだった。


 それから何年経ち――。今みたいに神社に興味がある頃。

ある日その近辺を走っていたら、その神社の存在に気付いた。鳥居周辺が印象的だった。

そのときは、「こんな所に神社あったんや……」なんて思った。


 そこは住宅地に囲まれており、境内はこじんまりとしている。

手水も素朴な雰囲気で、次の参拝者のためにだろうか、柄杓に水が溜められている風だった。

そのときの私は、二礼二拍手一礼という作法は知らず、神社に賽銭をあげておじぎするくらいだった。


 なので、そこの神社に賽銭をあげた。お願い事はしなかった。すると、


「ケーン」


 賽銭箱の裏あたりから、何かの鳴き声が聞こえた。

その鳴き声を聞いた私は、「犬でもいたんかな?」と思った。ちなみにそのとき、他に参拝者はいなかった。

 でも特に悪い感じもないと思うし、この出来事は、自分の中ではほっこりエピソードに入る。賽銭あげたら犬?が鳴いた。おまけに鳴き声もかわいい感じだったし。

 それからその神社へは時々行って賽銭をあげるが、二度と犬?の鳴き声を聞くことはなかった。


 そして数年前、ネットで「ケーン」という鳴き声は、狐のものだと知った。実際、動画で狐の鳴き声を聞くとよく似ている。ということは、あれは……?

 ちなみに狐に関しては、それっぽいのと一回遭遇したことがあった。その話はまた追々。


 今年もその神社へ行き、その近隣にあるお寺っぽい場所にも行った。普段そこへ行かないんだけど、そのとき好奇心が沸いたので。

 境内を見ていると、端に稲荷が祀られていることに気付いた。

神社ならだいたい宇迦之御魂神が主だけど、お寺だから荼枳尼天を祀ってるのかな?と思って、祠を見ただけでお参りはしなかった。

 そして辺りを見ると、稲荷の祠は丁度、その神社の本殿裏あたりにあった。

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