紫閻-sien-

(いつも見に来ていた この桜 今年は1人)

一人の男が桜並木を歩きながら 去年亡くなった彼女の事を思い

感傷に浸っていると 急に風が吹き 桜吹雪が男を包む


桜吹雪の中 彼女の声が聞こえた


「貴方がいなくて寂しい ねぇ 私のところに来て」


男は答える


「君がいなくなって 俺も寂しいと思ってた

お願いだから君のところに連れていってくれ」


そう言った途端 ヒラヒラ優しく舞っていた桜が

周りが見えないくらいの強い桜吹雪になる


《翌日》


桜の花びらに埋もれた男の死体が 桜並木で見つかった


その顔はとても穏やかだった


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紫閻-sien- @sien702

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