流るる孤島の巡り方

万事屋 霧崎静火

プロローグ—―神の悪戯

20××/05/12 8:45――

 朝仕事前にニュースを見ていたらなんかどれも同じニュースをやっていて気味悪い。一週間以内に巨大地震が起きて最悪日本列島が裂けるかもとか専門家が話していた。


20××/05:12 18:30――

 仕事でタクシー業務やってきたけど今日は売り上げが美味しい。例の朝のニュースを信じ込んで都内やら郊外やらに早めに避難するお客さんがチラホラいた。でも大半信じちゃいないだろう。


20××/05/15 10:38――

 まずい。今日ニュース見ずに仕事来たから分かんなかったけど、例の地震の件ホントらしい。列島の地盤プレートの動き具合からして明日の夜には地震がおきるとかなんとか。県外へ続く道路は渋滞しているから使い物にならない。なんか港から臨時フェリーとか海上自衛隊なんかも避難の援助をしているとか。


20××/05/15 18:30――

 会社の上層部から全社員に避難命令が出た。私も家に帰って荷物をまとめて逃げる。愛車も持っていくつもり。どこに行くにしてもこの車は離さない。


20××/05/16 10:30――

 自宅から一番近い県境についたけど『安全上の観点』という理由で橋が全部封鎖されている。自衛隊の救助船と民間のフェリーがひっきりなしに川を往復している。


20××/05/16 17:20――

 日が落ちてきた。でももう少しで私もフェリーに乗れる。本当は私の後ろに老夫婦が一組だけ並んでいた。でもなんかかわいそうだし年寄りには優しくしなきゃだから順番譲ってあげた。



—―――


「自衛隊の避難指示に従ってゆっくり乗ってください!」


—―――


「待って!車の一台くらい入らないの?!お願い!」


—―――


「必ず助けにk」


—―――


川に来るわけない巨大な津波。そしてその波の中に光る紫の稲妻。…私の意識はそこで途切れた。

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