短編集『エンベロープ・ジェネレーション』

白鷹いず

エピソード 001 「メットかぶれよ!」先輩と慎吾くんの会話

「なんだ、慎吾、おめーだったのかぁ?」


「あ、先輩おはよッス」


「朝っぱらからパンパンパンパンうるせーなぁ」


「たはは、すぃません、マフラーんとこ少し緩んでるみたいで、何度閉めてもダメなんスよねぇ」


「中古の原チャリはきっちり手入れしないとすぐにお釈迦になるぜ。あ? おめーまたノーヘルか? メットかぶれって」


「はぁ、こんな暑い日にカブルと頭がカブレちゃう……なんちゃって」


 パシッ!


「すぃーやせん><」


「脱力させてんじゃねーぞコラッ……でもよ~ケーサツに捕まるとメンドイしよ、ンナことよか、転んだだけで死ぬぞ」


「あー大丈夫ッス、さっきもそこでちょっと転んじゃって」


「おい? ひじがボロボロじゃん、怪我しなかったのか?」


「はい、大丈夫ッス、ちょっとすりむいたぐらいで」


「バカヤロー! そりゃ~オメー、単に運がよかっただけなんじゃねーの? 頭ぶつけなかったのかよ?」


「あ、植木の土の上だったから」


「はぁ~? じゃ~アスファルトだったらオメー死んでたぜ」


「……え、ええ、そうかもしんないっすけど……」


「頭って重いんだぜ、スッ転んだ勢いで地べたに倒れりゃさ、まず頭をぶつけちまう。おめー、慣性の法則って知ってっか?」


「カンセーのホーソク?」


「バイクで走ってっとさ、何かにぶつかっていきなり止まってもよ、体もバイクも今まで走ってたスピードを維持しようとするんだよ。そうすっとよ、いきなり倒れても頭って重いからよ、首の筋肉じゃ全然止められないわけよ。だから転ぶとまず頭からイッちゃうんだぜ」


「は、はぁ……」


「おめー、梨花ちゃんに膝枕とかしてもらったことあるのか?」


「え? ええ、ありますけど」


「したら今度よ、梨花ちゃんを膝枕してみ? 頭って重いんだって驚くぜ」


「そうなんスか?」


「オオよ! まぁ、梨花ちゃんとオメーの脳ミソじゃ重さが違うかもしんね~けどな」


「たははは、そうッスね」


「あぁ? ……おい慎吾なんだこれ?」


「え? なんスか?」


「おめーの頭の後ろ……うあぁ! バカ! 頭割れて脳ミソ出て来てるじゃねーか」


「えぇぇぇ! あ、ほ、ほんとだぁぁぁぁ! ぎゃぁぁぁ」


 パシッ!


「アホか! 脳ミソ出てたら生きてね~よ」


「え、じゃ、じゃぁこれって……」


「犬のフンだ、うははは、おめーが転んだとこにフンがあったんだろ、うわ~クッセ~」


「うわああ、ベットリだぁ、ちきしょ~」


「あ~あ、メットかぶってりゃよ、ちょっと洗うだけで済んだのに、おめーこのままじゃ学校行けねーだろ?」


「いったん帰って頭洗ってきます。ちきしょー今日遅刻だ~」


「チッ、だから言わんこっちゃね~って、メットかぶれよ」


「はい、じゃ~帰ります。先輩、しつれーしゃっす」


「おお!慌てんじゃねーぞ、気ぃつけて帰れよ」



   エピソード 001 「メットかぶれよ!」先輩と慎吾くんの会話  END

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