侵略
エドランド
プロローグ
陽光が降り注ぐ国会議事堂前。その石畳に、熱気が渦巻いていた。学生たちの波が、まるで押し寄せる潮のように、演壇を囲んでいた。その波の中心には、一人の青年が立っていた。
青年は背が高く、すらりとした体躯をしていた。漆黒の髪は風に靡き、鋭い眼光は聴衆を貫くかのようだった。学生たちは、そのカリスマ的な姿に圧倒され、息を呑んでいた。
「この星には地球外生命体が侵略して来ます。そして日本、我々の愛する国がその侵略の標的になるでしょう。しかし、私たちの手には希望があります。私たちの信仰に身を委ねれば、救いを得ることができます。この危機を乗り越えるために、私たちの冥王星の教団に参加してください。教祖様が……。そして、共に立ち向かい、未来を守りましょう。」
その言葉は、鋭利な刃の如く、一人ひとりの学生たちの心に深く突き刺さっていった。まるで、静寂を裂く雷鳴のように、彼らの魂を揺さぶる。しかし、周囲を取り囲む大人たちの反応は冷ややかだった。嘲笑を浮かべる者、鼻で嗤う者、中には野次を飛ばす者さえいた。彼らの軽薄な笑声は、まるで嘲笑の嵐の如きだった。
だが青年は気にせず演説を続けた。
「この国はかつて、世界に誇るほどの強さを持っていました。日露戦争でロシアに打ち勝ったこともあります。しかし、今の日本はあまりにも弱い。これは情けないことです。このままでは、我々は地球外生命体にすら打ち勝つことができません。日本を強くするためには、この国を一度完全に崩壊させ、再建する必要があります。そして、その再建こそが、私たちの未来を切り開く唯一の方法です。」
青年は、まるで天を衝くような勢いで右手を高く掲げ、力強い声で叫んだ。
「この国に真の力を!」
一瞬にして、会場の熱気は沸騰し、学生たちは怒りと希望に燃え盛る炎のように立ち上がった。歓声と怒号が入り混じった熱狂的な渦が、東京中を巻き込み、街全体を震わせる。高層ビル群が揺れ、アスファルトが唸り、まるで東京という巨体が息を呑んでいるかのようだった。
猫背に沈み込んだ白髪老人の声は、軋む床板のように不協和音を奏で、異議を唱え始めた。
「ここ日本は仏教の国じゃ。異教徒めが。」
青年は老人のことをにらむようにして言った。
「異教徒……。異教徒ですか。私たちの冥王星は異教徒ではないですよ。むしろどの宗教とも仲良くします。」
学生たちは老人を囲み、蹴り上げ、殴り飛ばした。その光景はまさに獰猛なライオンの群れに囲まれた無防備なシマウマの如くだった。
暴力は加速し、老人を殺戮の的とした。血の濡れた手が、無慈悲な拳が、彼の肉体を蹂躙し、死の門に引きずり込んでいった。老人の悲鳴が空に響き渡り、ただならぬ狂気が会場を支配した。
最後に、老人の首が切り落とされ、天に掲げられた。その野蛮な行為によって雄たけびが上がり、血塗れの手が凶悪な勝利を讃えた。
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