第32話 久遠の闇と、訪れた変化


 目が覚めて。

 いつも通りの真っ暗闇に、私はため息を吐いた。


「あぁ。今夜も、なのね……」


 ねっとり、じっとりと全身を絡め取る、黒い泥のような闇。

 ただただ人の不快感を煽るような、今すぐにでも逃げたくなるような、そんな空間。


 幼いころから何度も見続けている、いつまでも終わらない絶望の夜。


「………」


 私は努めて、自分の心を殺そうとする。

 だってそうすれば、気持ち悪さも怖ろしさも、感じないで済むから。


 たとえ、目覚めた時に地獄のような苦痛と不快感を思い出すのだとしても。

 今、この瞬間に感じる気が狂いそうなほどの絶望を、忘れることができるのだから。



「………」


 苦しい。

 辛い。

 悲しい。

 怖い。


 ここにいると。

 負の感情が連鎖して、止まらない。


「う……」


 ただここにいるだけで、胸の内から嫌なモノを吐き出しそうになる。


 夢は心を整理するために見ると聞いたことがあるけれど。

 だとしたら、これだけの闇を抱えている私は、どれだけ世界を呪っているのかしら。



「私は、私が、嫌い……」


 口に出したら、それは呪いになる。


 人を呪わば穴二つ。


 だったら、自分を呪うこの行為は、きっと2倍の効果があるに違いない。


「嫌い、嫌い、嫌い……」


 今日もまた。

 私は溢れ出てくる衝動に突き動かされるまま。


 夢の中で世界を、すべてを、自分を呪い続ける。


「嫌い、嫌い、ぜんぶ、嫌い……」


 それが、ずっと続くと思っていた。


   ・


   ・


   ・


「あ……」


 まただ。


 また見つけた。


「星……」


 暗い暗い闇の向こう。

 最近、星が一つ、見えるようになった。



(あの星を見ていると、元気が湧いてくる)


 小さな小さな星だけど。

 遠い遠い星だけど。


 なぜだかすぐそばで、ずっと励ましてくれているかのような。


 心の奥深いところから、くすぐったくなるような熱を、感じさせてくれる。



(あの星が、がんばれ、負けるなって、言ってくれているみたい)


 不快感と絶望しかない闇の中で。

 あれは間違いなく、私にとっての希望になった。


(あの星がある限り……私は、きっと、大丈夫)


 どうしてだか、そんな絵空事を信じるようになっていた。



(だって、あの星は……あんなにも、私に優しい)


 あの星は、きっと私に味方してくれている。

 あの星は、きっと私を助けようとしてくれている。


 そんな妄想じみた想いが、今ここで、私を温めてくれていた。



(今はまだ、届かない、けれど……)


 遠い遠い、私の導きの星ポラリス


 どうか。


 いつか。


 その輝きに、触れられますように。



 ハーベストハーベスター

  第1部 ファースト・ブレイク  完


ーーーーーーーーーー


ここまでで、ライトノベル1冊分のお話になります。

めっちゃ区切りいいんで良かったらこれを機に☆評価したって下さい!


次回から第2部。

新たな出会いと、青春の日々がシュウヤと仲間たちを待っていることでしょう!


応援、コメント、☆評価、レビューいただけると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る