色から感じる違和感

飛鳥部あかり

目醒め

今日から春休み。

来年度から私は中学二年生になる。

そのために、数学の予習をすることにした。


姉の使っていた教科書を取り出して、あるページを開く。

『確率』のページだ。


“赤球を6個、青球を2個、緑球を4個入れた袋から、同時に2個の球を取り出すとき、次の確率を求めなさい”


なぜだか妙な違和感がある。

……そうか、色の表記だ。

なぜ「赤」「青」「緑」なんだ?


赤は漢字だったら「紅蓮」「緋色」「深紅」

カタカナだったら「ヴァーミリオン」「クリムゾン」

ルビを振るなら「皇帝の赤インペリアルレッド」「フレイム


(めっちゃ「皇帝の赤インペリアルレッド」ってかっこよくね!?私天才かも!!ちなみに赤の言い換え考えるだけで30分かかった)


こんなにたくさん「赤」の言い換えがあるのに、なぜ「赤」なのか。

私は問題文にペンで書きこむ。


“赤球を6個、青球を2個、緑球を4個”

球を6個、球を2個、球を4個”


うん。しっくりくる。


(翠って漢字好きなんだよね……)


私は他のページを開いて添削を始める。

しばらくして、友達から連絡が届いているのに気が付いた。


『今暇?』

『カラオケ行こうと思ってるんだけど、一緒に行く?』

『早めに連絡ちょーだい』

『おーい』

『(╯•ω•╰)」

『……大丈夫?』

『先行ってるよ?……後からきていいから』

『別に、無理してこなくてもいいけどね……!!』


添削に夢中になっていたせいで、返信が遅れてしまった。

申し訳ない……。

私は、メッセージを打ち込む。


『ごめんね、勉強していて気が付かなかった。カラオケはいけない』


……そうだ。

私は、まわりの群れる人間とは違う。

孤独を愛し、他の人とは違う人間なのだ。


(シンプルに勉強していたいだけでもあるんだけど……)


いや、きっと私は“ニンゲン”と言えるような存在ではないだろう。

私はきっと社会不適合者。

神に選ばれしもの。

孤独を背負うもの。


(社会付適合者ってなんかかっこいいよね……)


でも、これはきっと私の運命ディスティニー


ああ、右眼が疼きだした……。

覚醒するというのか……!?

もう少し、もう少しだけ堪えてくれ。



私は遂に「中二病」というゲートを開けてしまった……。








ちなみに、この中二病ごっこは3日で飽きた。

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