第69話 ついに獣人国の崩壊が始まっていく……③

――魔王領ダンジョンの6階が元魔族のエリアだったが、7階に上がって貰って、6階が【獣人難民エリア】と作り変えた。

これにより獣人の受け入れ態勢は出来上がり、ファンブリス家に大量の一度だけ使える呪いを弾き飛ばすビー玉が送られ、貴族は逃げ場があっても一般人は逃げ場がないという問題を解決することが出来た。


死ぬか生きるかなら、難民となってでも逃げ出したいだろう。

戦うというのならご勝手にだ。


こうして一か月程様子を見ていたが、ついに獣人国は動き出した。

所が、人間国に行こうにも魔王領を通らねばならず、通ることが不可能だったのだ。

ある意味戦争を回避できそうか? と言う気持ちになったが、数名の強者が突っ切る事が出来て、最果ての街に到着。

獣人も住んで居るそこで一旦休まされることになった。

とは言っても、フォルから聞いた話では精神が壊れていたという事だったので、戦闘することは最早無理だろう。


突っ切る事が出来ても精神が壊れて兵士としては戦えない。

さて、この問題をどう解決するつもりか。

そう思っていると、海を使い、魔王領を迂回して人間国に――と言う案が出たらしい。

それを知った人間国は天使族に救援要請を出したようで、直ぐに天使族の兵士が配備された。


こうして、魔王領を迂回して海から人間国に攻め入る獣人国の兵士と、少なく残った人間と大量の天使族との戦争が開始された。

獣人と天使族とは相性は互角のようで、人間族は獣人には力で押し負ける。

力の獣人族と、魔力の天使族。

戦いは激しさを増していったが、次第に押されたのは獣人国だ。

開戦から5カ月後、ついに、奇襲攻撃を天使族が獣人国にし始めたという情報は、ファンブリス家より伝わった。


これを皮切りに、多くの一般獣人が一斉に避難を始め、ダンジョン外に置いてある門より避難民としてやってきた獣人たちは、難民エリアへと入っていく。

その難民の数は思った以上に多く、また戦えないお年寄りや女性、子供や赤子が殆どだった。

呪いを弾き飛ばすビー玉は5回作ってはファンブリス家に持っていき、それでもギリギリ足りるか足りないかくらいの量だったようだ。



「約ですが、500人の難民が来ていますね。今後も増えると予想されるとの事です」

「炊き出しは朝昼夜、滞りなくしているね?」

「はい、魔王様」

「赤子たち用のミルクにオムツは?」

「こちらも十分に今は足りている状態です。とても感謝されていたそうです」

「そうかい。ファンブリス家には感謝だね」

「ただ、獣人を束ねる者が必要です。トッシュ様とフォル様にお願いしてはどうでしょうか?」



確かに獣人たちを束ねるトップは必要か。

それならば、神格化しているフォルスターと、獣人王の隠し子であるトッシュタリスがもってこいだろう。


そこで、二人に難民エリアを束ねて欲しいとお願いすると「ファンブリス家の者として、トッシュタリスと共に務めさせていただきます」とフォルは返事を返し、トッシュもまた「フォルの手伝いをしたいと思います」と返事をしてくれたことにより、獣人エリアを束ねる相談役兼まとめ役に二人を抜擢し、炊き出しの際などに二人を紹介して、専用の建物にて作業をしているので、相談しに来て欲しいという事を伝えると、後の事は任せる事となった。

フォルとトッシュなら上手くやるだろう。


問題が一つあるとすれば、トッシュの事だが……。

銀髪の狼獣人は王の証。

避難民たちはどうトッシュを受け入れるかは分からないが、今は様子を見るしかない。

トッシュも覚悟を決めて頑張ると言っているのだから……。



「ポーターして震えていた奴隷のトッシュが、男になったもんだねぇ」



自分の体に流れる血を恨むこともあるだろうが、それを含めて獣人と言うのは【守る】と決めたら強い。

トッシュもそれを嫌程感じ取っている事だろう。

老人子供、弱った女性たちを守ろうとするのは【オスなら当たり前】の行動かも知れないが、トッシュには【王たる器】が備わっているという証でもある。


そしてこの難民の最後に、ファンブリス家がやってきたのだ。

他の貴族たちは自分たちの領地に戻ったりして逃げ切ったようだが、どうなるかは分からない。

ただ、ファンブリス家は領地を持たない貴族であったこともあり、難民としてくることに危機感や不快感は無かったのだという。

そして長い事行方不明となっていたフォルスターとの再会は、ファンブリス家とってこの上ない幸福だったのだ。



「おお……おお!! このような神格化されるとは……。ファンブリス家にとって何よりも吉兆であります!!」

「君たちは弟の子孫だろうか。同じファンブリス家にとって、今後吉兆と鳴れれば嬉しいが」

「隣の方は……王族の証の銀の狼ではありませんか!!」

「初めまして、王の隠し子のトッシュタリスと申します」



その言葉にファンブリス家はようやく王に子が生まれなかったことを理解したようだ。

そして王妃により神格している母親を殺され、トッシュが人間国で奴隷として働いていた事を知ると、王妃へ対する怒りは凄まじく、ファンブリス家は今後王妃が生き残っていた場合、この事実を伝える事に決めたようだ。

しかし――。



「既に獣人国には天使族が続々と入ってきております。王と王妃は時期捕まるでしょうな……」

「となると、斬首刑……断頭台は免れませんね」

「次の王がいないというのも、天使族の耳には入っているでしょう。実際はこちらにいらっしゃる訳ですが」

「天使族にとって有益な人物を王に添えるでしょうが、代々銀の髪の狼獣人にしか国をまとめ上げる事は不可能だと言われているのです。巨大なクリスタルが城にはあるのですが、そのクリスタルの恩恵を受ける事が困難だそうで」

「巨大なクリスタル……ですか」

「そのクリスタルに、王族だけが使える【遠吠え】をすることで、国は安定しているとされていたんですが……。現王は「喉を傷める」と言ってしてこなかったそうです」



随分と怠惰な王だね。

そう思ったが、トッシュタリスにもスキル【遠吠え】はあったはずだ。



「そのクリスタル、動かせないのかねぇ」

「国が滅びれば、クリスタルは次期王の元へ移動すると言われています」

「次期王のもとに移動するってことは……」

「恐らく、こちらに移動するのでないかと……」

「「「「……」」」」



魔王領の中に獣人領が出来るってことかね?

取りあえず今は何とも言えない。

様子を見るしかないねぇ……。



「まぁ、トッシュについていくクリスタルがあるなら、トッシュが追々獣人たちを束ねていくしかないだろうねぇ」

「う……。僕に出来るでしょうか」

「トッシュ、私がお差さえします」

「フォル……」



こうして、戦況は悪化する中――半年後ついに国王と王妃、そして側妃は捕えられ、その首は断頭台へと消えたという報告が来た。

その際、クリスタルが消えて天使族は慌てたらしいが、輝くクリスタルは魔王領の難民エリアにやってきたのは……言う迄もないねぇ。


それと同時に聞こえてきたことが一つある。

天使族が【英雄を召喚】し、その英雄の力あってこそだったと。

そして、天使族が次に狙うは魔王の首だと。


まだまだ波乱は待ち構えているのは――確かなようだね?





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