第68話 ついに獣人国の崩壊が始まっていく……②

獣人国からの書簡には、こう書いてあった。


『同盟国を辞めて貰うのは困る。今後人間国との戦争の際、魔王領を戦地として使いたい為、このままでいて欲しい。今まで断交していたことについてはお詫び申し上げる』


ただそれだけ。

余りにも自分本位な書簡に、アタシの額に青筋が出来る。

まぁ、人間なり獣人が死ねばゾンビとして使えるっちゃ使えるが、それにしてもねぇ?


『お詫び申し上げる程度では納得は一切しない。どう責任を取るおつもりか。また、その内容次第では同盟国を永遠にきる事も検討している』


そう返事を返してみると――。


『お詫びだけでは許せないというのなら、それこそそちらの器があまりにも小さいのではないだろうか。我が獣人国をあまり怒らせない方がいい』


と上から目線出来た為、【王が変わるまで永遠の断交を表明する。また、魔王領で背戦争をした場合、両者に多額の賠償金を支払って貰う事と呪いを振りまくことにする】


そう送り、これが決定的になって断交となった。

無論魔王領で戦争した場合、戦争を行った両者に対して多額の賠償金及び呪いを掛けるというこちら側の脅しに関して返事はなかった。


無論人間国にも同様に「魔王領で戦争をすれば、多額の賠償金及び呪いを掛ける」と脅すと「その様な真似は致しません」と返事が来ていたので、余程国王の前で殺した兵士の事で恐怖しているのだろう。



「これで獣人国とは断交か。さて、ドワーフ王国からどう獣人国に入ろうかね」

「一応影を使い、ファンブリス家に連絡だけはした方がいいのではないか? 入るのは戦争が終わってからでも構わんだろう?」



確かに戦争中に行っても色々問題か。

そう思い、影を使い『ファンブリス家にフォルスターが生きている事』また『場所は何処かは言えないが、安全な場所で保護している事』を魔王からの書簡として持って行って貰い、三日後返事が届いた。


それには『奴隷に堕とされたというフォルスターが生きていたというのは、我がファンブリス家にとって何よりの幸福である。また――』と続いた手紙には、代々国王の宰相の立場にいたが、今は陰謀にやられ宰相の立場ではない事。そして現宰相はサル獣人の者で、陛下を唆している事。戦争を反対している国民を無視して、戦争を開始しようとしている事や、その戦争の場に魔王領を使う事が表明されたことが記載されていた。


あくまで魔王領を使うというのなら……と、カナデに頼みごとをすることにする。



「カナデ、魔族と最果ての街から出ている往復の馬車の道、馬車に乗る人間には技が効かないように、魔王領全体に【発狂の始まり】に【降り注ぐ恐怖】に【消えゆく足元】を発動することは可能かい?」

「それくらいでしたら可能です」

「嫌でも戦うっていうならその感覚の中で戦って貰おうかね。戦えればの話だが」

「これが呪いと言う訳ですね?」

「中々エグイですわ……」



そうピアすら身震いする姿にアタシは苦笑いを浮かべると、「領土侵犯してくるんだ、それくらいの罰は与えないとねぇ?」と笑顔で答えると、ドワーフ王に【発狂の始まり】に【降り注ぐ恐怖】に【消えゆく足元】の効果を話した。



「【発狂の始まり】はパーティー全員が発狂寸前の精神状態に持って行くことが可能。【降り注ぐ恐怖】は今すぐ死にたくなるような恐怖が迫ってくる心理状態へおとす事が可能。最後の【消えゆく足元】は意識を混濁させることが出来る最悪なスキルさね」

「それは……えげつないな」

「戦いたいなら別の方法を取るしかない。だが、空を飛べる獣人も少ない。奴らはどうやって戦うつもりかねぇ?」

「天使族は空を飛んでの奇襲が得意だ。恐らく獣人王国が戦地となろう」



その言葉に、アタシの脳裏に浮かんだのは一般人だ。

戦争には関係のない一般人が巻き込まれて悲しい目に遭うのだけは避けたい。



「獣人国がどうなろうと、今となっては知ったこっちゃないが……難民の受け入れだけはしようかね。魔王城までの道を一般人なら呪いを受けずに来れるようには可能かい?」

「難しいですね。アイテムを配ればなんとかなりそうですが」

「ふむ……ファンブリス家にお願いしようかね」

「アイテムはビー玉に付与する感じでいいと思います。使えるのは一度きりで。俺が作っておきますので後で影に運ばせてください」

「あいよ」



そうなると獣人専用の受け入れエリアが必要になる。

ダンジョンに獣人難民専用エリアを作るか……。



「さて、そうと決まれば忙しくなるね。ファンブリス家に書簡を送りたい。モーダン直ぐに用意を。ダンジョンに獣人難民を受け入れるエリアを作るよ」

「全く、魔王はなんだかんだと困っている者を放ってはおけん性質なのだな」

「上が勝手にやってる戦争に、一般人が巻き込まれるなんてのが嫌いなだけさね」

「ははは、うむ、それが優しいというのだ」

「優しいもんかい。アタシは戦争経験者だからこそ、巻き込まれることの苦しさを知ってるのさ」



そう言ってカツカツとヒールを鳴らして立ち止まると、頭の中で必要な物を色々と考える。

赤子、老人の多くも来るだろう。

特に女性が多く来ることも考えられる。

男たちは兵士として連れて行かれるだろうからねぇ……。

有り余るほどの金はある。金のない者たちが多く来ることを考えて……炊き出しと配給を行うのがいいだろう。

おむつやミルクなんかは特に赤子にとっても死活問題。

それらはタダでだしてやらないと、可哀そうだねぇ……。

後は身ぎれいにするための銭湯は必須だろう。

多めに作っておいて損はない。



「よし、ある程度頭の中で固まったよ。早速作っておこうかね!!」



そういうとマントを翻してアタシは新たなエリア――【獣人難民エリア】を作るべく動き出した。




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